シンガーはただ歌うだけ
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そこそこ仲のいい友達だった。
友達になったやつと、友達の友達だから仲良くなった奴。
3人とも馬鹿みたいに青春を謳歌してた。3人でつまんない素人バンドを組んで、何が楽しいのかへたくそな演奏と歌で昔のヒットバンドの曲を演奏して、誰が一番下手だったかをげらげら笑いながら話し合った。
若かった。
大学生ってのは暇な時間が多いから遊んでるうちに授業に出るのも面倒になって、3人で講義をふけて駅前で演奏とかしてた。3人とも少しずつ趣味や好みが違ってたけど、それでもよかった。どうせ素人の演奏が人目に付くことなどない。分かってても、それを3人でやるとどうしようもなく楽しかった。
そしてそんなバカをやっている最中にふと、その中の1人が言い出した。
「最近すげぇオンラインゲームやってんだけど・・・お前ら興味ない?」
「ない」「ないない」と即答して「ノリ悪いぞお前らー!」と叫ぶそいつの反応を楽しみながら、結局いつもの馬鹿なノリで盛り上がり、そこで「ソードアート・オンライン」というゲームの存在を初めて知ったんだ。
フルダイブとかヴァーチュアルリアイティとか、まだ小説の世界の物だと思ってた俺は、その友達の熱心な説得に負けてそのゲームを一緒にやることになった。
なんでも友達は商品化する前のゲームをプレイして不具合を見つける「βテスター」と言うのをやってたらしい。確かに最近すこし付き合いが悪いとは思っていたが、そういう事情だったのかと驚いた。
徹夜してゲームショップに張り込んで、「金はどうすんだよ」「パチンコで一発当ててきたから2人分はどうにかなる」「1人分足りねえじゃん」「テスターには無料サービスなのさ」とかくだらない話をして、3人で並んで2つ買った。一人余計だったじゃんかと笑いながら、ヘルメットみたいなゲーム機とソフトを抱えて友達の家に持ち込んだ。
3人でゲーム始めて、リアルな世界そっくりの仮想世界に「すげーすげー!」って馬鹿みたいに叫びまくりながらレクチャー受けて、想像してたようなポリゴンの荒さが無いとかモンスターがリアルすぎてキモイとか、「それを言えばお前のアバターのイケメン加減の方がキモイじゃん」って言われたあいつが顔を真っ赤にして怒って・・・
それからまもなくして、SAOという世界初のフルダイブ型MMORPGは「デスゲーム」になった。
= =
社会的地位や、家族に何と言われるだろうという恐怖。
この世界から今すぐ脱出する術と自分の命が直結してしまったその町をふらふらと歩く私はきっと幽鬼のように見えただろう。
だから、その音楽を聞いたのは、ただ偶然そこの近くを通りがかったから。それだけのきっかけだった。”聞き耳スキル”というのも必要なかった。
その耳に飛び込んできたのは、
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