第1部
第8話 戦艦棲姫、観艦式ニ潜入ス〜其ノ壱〜
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して欲しいな、人が知れてしまうよ?」
「あ、ごめん響……失礼しました、准将閣下」
「気にするな、俺も気にしてない」
頭を下げる葛葉提督を制し、微笑みかける。
反面、心情は複雑だった。
件の政策≠ニいうのは、大本営が打ち出した特別政策の事だ。
艦娘と相性の良い人間を選定、提督として教育し、即戦力とする……一種の徴兵令制度のようなものだ。
この政策は完全志願制だが、提督として深海棲艦が跋扈する戦場へ艦娘と共に征く事を強要しているようで、俺は認め難い政策だった。
「……少佐、何故君は提督に?」
「…お恥ずかしい限りですが、その…………友人に、誘われまして……」
「……成る程」
若さ故の至りと言うわけだ。
まぁそう言う自分もまだまだ若手の部類なのだが。
「少佐、一つ聞きたい」
「は、はいッ??」
「何故君は戦うのだ?
国家の為?名誉か?地位か?
提督として彼女達を指揮すると言うことは、最終的には戦場に身を晒すと言う事だ。
その意味が分からん訳じゃあるまい?」
「………俺は…」
葛葉提督は押し黙って俯いた。
それを見て俺は、昔の自分を思い出した。
《お前達が何故此処にいるのか、戦場ではその意味を失った奴から死んで行く。
お前達を戦場へ導いた意味を……その意思を、お前達の抱いた志を忘れるな。
志を持たない奴は兵士じゃない、只の賊だ》
士官学校で教官に、耳にタコが出来るくらい口酸っぱく繰り返し言われた言葉だ。
葛葉提督は今、軍人としてのターニングポイントに居る。
「……私は、先達の様な立派な目的も、意思もありません。
指揮も人並み以下ですし、響達が居なければ鎮守府の運用も出来ません。
でも、彼女達と共に戦いたい……彼女達を助けたいんです。
私に出来ることなどたかが知れています。
けど、彼女達の助けになりたいんです」
「……そうか」
仲間の為に戦いたい。
葛葉提督ははっきりとそう言った。
俺は微笑みながら葛葉提督の肩に手を置いた。
「それでいい、……戦う理由を、意思を、君の抱いた志を忘れるな。
戦場では、その志を見失った奴から死んで行く。
……仲間の為に戦うんだろ?」
「……はいッ??」
葛葉提督は大きく頷いた。
「……准将閣下は…」
「ん?」
「閣下は、何故戦うのですか?」
葛葉提督は純粋な瞳で真っ直ぐ俺を見ていた。
俺は笑いながら踵を返し、歩き出した。
「君と同じさ。
時代に翻弄されて、気付いたらこうなってた。
そんな俺について来てくれる仲間の為に、俺は戦ってる。
大切な仲間だ」
「も、もし宜しければ今度戦術に関して御教授願いますッ??」
「はははッ?? 互いに生きていたらなッ??
また会おう
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