第百七十六話 手取川の合戦その十二
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「だからな」
「今はですか」
「うむ、少しな」
こう言うのだった。
「様子を見たい」
「では朝廷には」
「帝にはじゃ」
ここでだ、信長は林を見て言った。
「新五郎、よいか」
「はい」
「朝廷にはもう少し待って頂きたいとな」
「お話しますか」
「そうするとしよう」
「幕府のことは」
「やはり幕府は必要じゃし」
それにというのだ。
「幕府を倒してもな」
「それでもですな」
「いらぬ反感を持つ者が天下に出るものじゃからな」
「それで、ですな」
「幾ら帝のお話でもな」
「幕府が危うくとも」
「公方様を替えることもじゃ」
このことも考えられた、しかしだというのだ。
「出来ればな」
「すべきではありませんか」
「それに越したことはない。しかし」
「しかしですか」
「幕府が必要であるのは天下の柱になるからじゃ」
例え衰えていても権威は権威だ、信長もその権威を立てて天下布武を進めている。それに必要だからだというのだ。
「しかし。天下に害になるのなら」
「その時はですか」
「致し方あるまい」
「帝のお言葉通り」
「帝のお考えも当然じゃが」
最早義昭は天下にとって危ういのではないかという見方はというのだ。
「しかしな」
「すぐにはですな」
「うむ、倒すことはな」
「今少しですな」
「見たい、そうお伝えせよ」
「わかりました、では」
林も信長の言葉に頷いて応えた、そしてだった。
そうした話をしてだった、信長はあらためて家臣達に言った、今度の話はというと。
「では御主達もじゃ」
「はい、我等も」
「安土にですな」
「共に入るのじゃ」
そうせよというのだ。
「この城は奇妙に任せる、それで爺」
「はい」
また平手だった、平手もすぐに主に応える。
「御主はその奇妙をじゃ」
「お助けせよと」
「そうじゃ、頼むぞ」
「畏まりました」
平手も確かな声で応える、彼は基本的に岐阜にいることになった。
そしてだ、その他の者達がだった。
岐阜から安土に移ることになった、織田家はここに新たな拠点に移りそこからさらなる天下布武を進めることになった。
信長も家臣達も安土に移る、その中には松永もいる。相変わらず織田家の殆どの者には忌み嫌われているが。
その彼がだ、己の家臣達にこう言っていた。
「安土に城を築かれるとは」
「それも相当な規模の城ですな」
「前から見ていてまさかと思いましたが」
「しかもその頂点にです」
「恐ろしいまでのものを築きますな」
「織田信長、これ以上は放っておけませぬな」
家臣の一人がこう松永に言ってきた。
「殿、ですから」
「わしに動けというのじゃな」
「はい」
その通りだというのだ。
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