第七幕その十一
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「何でしたら私が」
「加藤さんがですか」
「いい人を紹介しますが」
こう提案してくれたのです。
「そうしますが」
「いえ、それは」
「遠慮されますか」
「はい、そうしたことは」
「ううん、本当にいい人を知ってるのですが」
「折角ですが」
「妻の親戚でして」
その人はというのです。
「二十五歳で美人で気立てがよく」
「あっ、いい感じだね」
「そうだよね」
動物達は加藤さんの言葉を聞いて言いました。
「実際にね」
「そんな感じだね」
「しかも料理上手で」
加藤さんは先生にさらにお話します。
「何かといい人ですよ」
「そうなのですか」
「趣味はテニスと水泳です」
「活発な方なのですね」
「はい、学生時代はテニスの選手でした」
そうした人だったというのです。
「そうした人なので」
「僕にですか」
「どうかと思うのですが」
「いや、僕は運動音痴で」
それにという先生でした。
「しかもこの外見ですから」
「人は顔ではないですよ」
「よくそう言ってもらえますが」
「先生のお人柄なら」
加藤さんも松山にいる間ずっと先生と一緒です、だからわかってきたことです。
「必ずいい人と一緒になれますよ」
「ですが」
「それでもですか」
「僕はまだそうしたことは」
「結婚にはまだ、はないですよ」
加藤さんは先生にまだ言うのでした、先生のまだ、とは別のまだ、です。
「思えばその時こそです」
「結婚する時ですか」
「そうです、ですから」
「ううむ、しかしです」
「それでもですか」
「僕は結婚はまだいいです」
やっぱりこう言うのでした。
「せっかくのお願いですが」
「左様ですか、ではこのお話も」
「はい、そういうことで」
こう言ってでした、先生の結婚のお話は今は終わりました。ですが動物達はやれやれといったお顔で言い合いました。
「先生もねえ」
「奥手だしね」
「女の人には疎いし」
「しかもこんなのだから」
「話が全く進まないんだよね」
「結婚のことは」
ことこのことについてはです。
「本当にね」
「どうしたものか」
「このままじゃ冗談抜きで一生独身だよ」
「早く結婚すればいいのに」
「誰か見付けてね」
「一刻も早く」
こう言うのでした、しかしやっぱりこのことには奥手なままの先生でした。そうしたお話をしているうちにバスは松山駅に着きました。
バスから降りてです、加藤さんは先生に言いました。
「では今から」
「はい、長老さんのところに行ってですね」
「お話しましょう」
カワウソさん達とお話したことをです、そうしたことをお話してそれから新たな場所に入る先生ご一行でした。
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