消失−わかれ
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うな、そんな風に考えさせられた。
「お、俺は……」
先ほどの問い掛けに答えるべきか、否かで戸惑いを隠せずにいる一夏。普段でももちろんのこと、つい先ほど自分がどこにいるのかもわからなくなってきたところで、そこにいるか?なんて聞かれても咄嗟に答えられるはずが無かった。
そんな彼に、時間が無いのだと言わんばかりに緑色の結晶はその光をより強く放出した。
『我々は、私によってお前に希望を託す』
先ほどよりも暖かく、母親のように優しい声を最後に、一夏は意識を手放した。
◇
世界のどこかに必ず存在する島。“竜宮島“。現代から切り離されたかのような昭和の雰囲気を残したこの島は、のどかで平凡で、そして平和だった。
そんな島の光景を、一夏はただただ傍観することしか方法がなかった。
一夏はさきほど引きずり込まれた空間の中での出来事を思い返した。
『我々は近いうちにこの世界を覆い尽くしてしまうだろう』
視線の限りにまで続くただ真っ白な空間━━否、世界とでも言うべきでありうそこに、一夏ともう一人はいた。
もう一人は一夏の目の前で女性の形を取っていたが、それが人間ではないということがそのときの一夏にはなんとなく理解できた。
『しかし、私はそれを望まない。だというのに、私には我々を止める術がない』
人間としての外見はだいたい二十代程度の若さだろう。その言語はかなり意味が不明で、まず“我々“がなんのことを指すのかが気になって仕方がなかった。
「どういう……ことなんですか?」
だが女性?に聞いても知ることはできないだろうと言うよくわからない直感に従い、一夏は他のことを聞き出そうとした。
『じきにわかる。━━━とにかく私はあらゆる手を使って我々の道を阻もうとした。そして、私は我々を止めるためにある結論に至った』
「結論……?」
『それは遠い時空から巨人になるだけの資質を持つ者を、この世界に同化させること。そして真壁朱音だった者が持っていた希望を託すことだ』
真壁朱音……それが目の前の女性だった人の名前なのだろうか?聞いてもいないのに、それが正解だと理解する。
『私の因子をお前に継がせる。それによってお前は我々になり、私となり、人間の理から半分、外れることになる。━━━勝手なことをしてしまうが、どうか許して欲しい』
そう言って真壁朱音だった者は頭を下げた。きっと目の前の真壁朱音だっただった者は突然訳の分からない出来事に巻き込んでしまった自分のことを申し訳なく思っているのだろう。━━もしこれが誘拐事件が起きる前のことだった、ふざけるな!と一言文句を垂れていたであろう。もしくは、今すぐ家族の下へ帰してくれとでも泣き喚いていただろうか?
……しかし、今の一夏にとってすればこれは
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