後始末
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息にあたっていた。
「親父」
「雪羅か、須郷の方は別の者に行かせた。丁度今、身柄を確保したそうだ」
「そうか・・・。ここにいる人は?」
「確認したところ、皆問題は無いようだ」
「そっか、よかった・・・」
「彼女なら、そこの病室だ」
そう言って親父は開けられた一室の部屋を指差す。
「行ってやれ」
「ああ、親父」
「なんだ?」
「・・・ありがとう」
俺はそう言い残して車椅子を動かした。
部屋の前まで来ると、月明かりに照らされた部屋の入り口と影との境がまるで壁ように思えた。そこで止まっていると。後ろから背中を押されたような感覚になった。
『ほら、待ってるよ』
『迎えに行ってあげて』
一人は小さな手、もう一人は少し大きな手。俺はその二人の手を知っていた。
だから前に進めた。
『ああ、ありがとう』
俺は心の中でそう呟くと、部屋の中に入っていった。
そこには黒い髪を長く伸ばし、透き通るような碧眼をした少女がそこにはいた。
俺はその顔を見て、その人の名前を呼んだ。
「迎えに来たよ、エリー」
「シオ、ン・・・?」
「ああ、そうだよ。遅くなってごめん、ちょっと外で色々あってな・・・」
俺の眼からは自然と涙は出なかった。俺はエリーを抱き締めて、彼女もゆっくりと背中に手を回した。
「ううん、待ってた。ずっと、君が来てくれるって。やっと、その時が来た・・・」
エリーは静かに涙を流しながら呟く。たどたどしいその言葉はしっかりと俺の耳に入ってくる。
エリーは俺の眼をしっかりと見て言った。
「はじめまして、雪宮 雫です。ありがとう、シオン」
俺はその言葉に対してこう答えた。
彼女の耳に聞こえるように───
「高嶺 雪羅です。・・・こちらこそありがとう、エリー」
唇が触れ合い、二人の瞳には静かに涙の雫がこぼれる。
伝わる体温、共有する想い。その感覚は二年の時をこえて今、現実となる。
それは、一人の剣士と一人の姫によって紡がれる物語。
白き剣士と戦乙女の───
───二人の軌跡の物語
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