番外編
番外編5:ある執務官の恋愛事情
第4話
[4/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
はの病室を辞去したフェイトはタクシーを呼んでアースラへと向かった。
とっぷりと日も暮れたころ、フェイトを乗せたタクシーは制限区域へ入るための
ゲートの前で止まった。
料金を支払ってタクシーを降りると、フェイトはゲートを守る局員に自分のIDを
呈示し、ゲートを通りぬけた。
"車を呼びましょうか?"というその局員の提案に首を振って、フェイトは
アースラへの道のりを歩きだした。
港湾地区を吹き抜ける風が彼女の長い金髪を揺らし、その頬を撫でる。
(たまにはこういうのもいいよね)
普段は車であっという間に走りぬけてしまうところを夜風に吹かれながら歩く。
多忙な彼女からすれば非効率極まりないことではあったが、今はその非効率さえも
心地よく感じていた。
(それに、気持ちの整理もしたかったしね・・・)
行く先にその巨体をさらすアースラに目を向け、フェイトは嘆息する。
その中で恐らくは仕事に勤しんでいるであろう、想い人たる同僚を思って。
(好きです・・・かな? でも、お友達として好きって誤解されるかも・・・)
想いを伝えるのにどんな言葉を用いるべきか?
それが今の彼女にとっての最重要課題であった。
そうこうしているうちに彼女はアースラの前までたどり着いていた。
スロープを上り、メインハッチを潜ると艦内の通路を歩いて自室へ向かう。
慣れた道のりである。
だが、一大決心をもって歩く彼女の心は緊張に高鳴っていた。
そして彼女の足は自室の前で止まる。
(緊張する・・・。自分の部屋なのに・・・)
肩を上下させてなんどか深呼吸すると、扉を開けて部屋の中へと足を踏み入れた。
「あ、おかえりなさい」
正面にあるのはフェイト自身の机であり、当然そこには誰も座っていない。
彼女を出迎える声はその脇にある少し小さめの机に向かって座る男から発せられた。
シンクレア・クロス1等陸尉、彼女の思い人から。
「う、うん。ただいま」
彼女は高鳴る心を押さえこみつつ、普段通りの受け答えを心がけようとする。
が、それは成功しているとは言えなかった。
フェイトはバッグを置いて自分の席に座る。
「遅かったですね。 何かあったんですか?」
「うん。 ちょっと、ね」
(はぁ・・・、どうしよう。 ドキドキしちゃうよ・・・)
フェイトはメールを確認しようと端末を開くが、その内容は一向に
頭の中に入って来なかった。
そんな彼女の様子を見ていたシンクレアは、おもむろに席を立つと
部屋の扉に向かって歩いていった。
そして扉をロックすると、席に座ってぼんやりと画面を眺めている
フェイトに向き直った
「フェイトさん。 お話ししたいことがあるんですが、いいですか?
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ