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あさきゆめみし
第一章
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第一章

                     あさきゆめみし
「ねえ」
 ふとだ。一緒に歩いている時にだった。
 彼女は僕に声をかけてきた。
 僕達は今二人で道を歩いている。川の土手の上の道、左手に低い場所にある川が見える。アスファルトの道から川までは碧の絨毯になっている。
 そこに野花が咲いていて蝶が寄っていて子供達が遊んでいる。右手には、やっぱり低くなっている場所にだ。家々が見える。そこからは生活の匂いがする。
 空は青く何処までも澄んでいる。白い雲も奇麗だ。その中でだった。
 彼女がだ。僕に言ってきた。
「何かこうしているのってね」
「おかしいとか?」
「不思議ね」
 こう言うのだった。
「今急にそんなことを思ったのよ」
「不思議って」
「私達ってあれじゃない」
 今度は僕達の話になった。
「中学の時にこの町に来たわよね」
「三年の時だったね」
「うん、三年になる春休みの時に」
 その時のことをだ。僕に話してきた。
「そうだったわよね。私の家の都合で」
「その時に僕のいたクラスに入って」
 三年になったらいきなり見知らぬ顔がいた。転校生が来ることは聞いていたけれど女の子だった。それが彼女だった。
「そこで知り合って」
「入った高校が同じで」
「そこでもまた同じクラスで」
 中学高校と二年続いて同じクラスだった。
 同じクラスになってだ。僕達は。
 部活も一緒になった。吹奏楽部だ。それでだった。
 何となく一緒にいることが多くなった。そうして気付くと。
 付き合っていると言える関係になっていた。それで今は日曜の部活が終わって学校の帰り道を一緒に歩いていた。その時だ。
 彼女がだ。僕に言ってきた。
「こうして一緒にいるんだから」
「出会いねえ」
「人と人ってわからないわよね」
 上を見上げて微笑みながらの言葉だった。
「何時誰と何処で出会うかなんてね」
「本当にわからないよね」
「神様がそうしているのかしら」
 彼女はこんなことを言った。
「それでなのかしら」
「そうかもね」
「それが不思議なのよ」
 また言う彼女だった。上を見上げ続けたまま。僕に話していく。
「私達が二人で今こうして歩いていることも」
「出会えたから」
「よく。出会えた奇跡っていうけれど」
 歌の歌詞によくある。その話だった。
「本当なのかもね」
「そうかもね」
 僕は彼女のその言葉に頷いた。
「何か。こうした話をしていたら」
「そう思えてきた?」
「思えてきたかな。出会いかあ」
 僕も言った。その出会いについて。
「何でもないって思ってたけれど」
「違うのよね。実は」
「何か夢みたいだよ」
 僕の言葉だ。自然に出た。
「こうして二人で一緒にいること自体が」

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