第七章
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第七章
「そうしたのよ」
「気合入れてって」
「そうしてか」
「試合に間に合わせた」
「そうだったのか」
「そうよ。もう究極のやり方でね」
それでだというのだ。
「葱と人参と大蒜と生姜とキャベツと鶏肉と卵を入れてじっくりとたいた雑炊に風邪薬、それをたっぷりと食べさせてね」
まずは基本であった。
「それと。お酒を飲ませて」
ここは小声で話す。流石に高校生でおおっぴらには話せない。
「汗をたっぷりかかせてね」
「で、なおした」
「基本だけれどそれをハードにしてか」
「それで風邪を治させたんだな」
「そうしてか」
「そうよ。間に合って何よりだったわ」
彼女は満面の笑顔で話す。
「いやあ、本当に何よりよ」
「ああ。御前がそれを理恵ちゃんにやってくれてな」
「それで風邪が一気に治ってな」
「球場であいつを応援してくれたから」
「甲子園決まったよ」
まさにだ。それによってであった。徹が奮起してだ。甲子園を勝ち取ったのだ。そのことは誰が見ても明らかななことであった。
「いやあ、本当によかった」
「全くな」
「それにな。あの二人あれからな」
「余計に仲良くなったしな」
しかもなのであった。二人の仲もなのだった。
「あの娘の声いつも聞いてな」
「というかあの声を聞いて」
「それで幸せなんだな」
「それは彼だけじゃないわよ」
ところがだ。その女の子はだ。ここでこんなことを言うのであった。
「理恵だってそうだから」
「あれっ、ていうと」
「あの娘もか?」
「理恵ちゃんもか」
「そうだったんだな」
「そうよ。実を言えばね」
ここでだ。衝撃の事実がわかるのだった。理恵と彼女だけが知っているだ。その衝撃の事実が今ここで話されるのであった。
「あの娘も。徹君の声がね」
「好きだったんだな」
「そうだったんだな」
「それでだったんだ」
「そうなのよ。彼の声が好きだったのよ」
それでだというのだ。
「それで告白も受けたしね」
「交際もしてるんだな」
「あの娘もか」
「あいつの声、好きだったんだな」
「成程なあ」
「好きなのは一方だけとは限らないのよ」
この事実もだ。話されるのだった。
「もう一方もってこともあるのよ」
「声についてもそうなんだな」
「そうだったんだな」
皆このこともわかったのだった。そしてだ。今も二人仲良く話している徹と理恵も見る。見れば徹だけでなく理恵もであった。彼の声を聞いてだ。にこやかに笑っているのだった。そんな二人であった。
エンジェルボイス 完
2011・2・24
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