第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
24.July・Midnight:『Masters』
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……御坂さん、白井さん。あまり近付かない方がいいわ、この変態には」
「お姉様、お下がりくださいですの。視線だけでも不浄ですわ」
文字通りに『白い眼差し』である。眼鏡越しのと裸眼の、軽蔑の視線は。
「酷ッ! 変態は変態でも、嚆矢君は女の子に手を出した事なんてない変態紳士でしょうが!」
「ハイハイ、対馬さん。寝言は寝てから言ってくださいねー」
「はい、傷ついたー……嚆矢くんのHPはもうゼロよ!」
それら、全てを含めて。177支部の一室は、朗らかな笑いに包まれて……。
………………
…………
……
夜でも綺羅びやかな都市の片隅、暗がりの袋小路の最果て。其処に、切破風屋根の屋敷はある。息を潜めるように、或いは、傲然と。
学園都市の成立よりもずっと前からあった、明治初期の古めかしい洋館建築。黒一色の、さながら匈牙利の森の奥に在ると言う、シュトレゴイカヴァールの『黒の碑』の如く聳え立って。
「貴方が────」
屋敷の男主人が。黒い肌の麗人が、或いは、燃え立つような瞳の魔人が口を開く。
「貴方がこうして────我が領域に踏み込むのは、何度目でしたか?」
磨き終えたクリスタルグラスに、球形の氷を収めたグラスに、純喫茶では有り得ないもの。私物のブランデーを、最後の一滴まで注ぐ────魔導師が。
「さてな────思い出したくもねぇよ、こちとら」
麗人に応えたまま、ロックのブランデーを傾けた男は────煙草を灰皿に躙った、隆々たる筋骨を革の外套で包んだ、サングラスの白人の偉丈夫は。
「ねぇ────“牡牛座第四星の博士”?」
「なぁ────“土星の円環の師父”?」
「──────」
にこりと、笑い合いながら。傍らに冷や汗を流しながら臨戦態勢で立つ、口を挟む事はおろか息をする事すら苦しげな。何時でも腰の、一向に気休め足らない拳銃を発砲可能な構えの、『水神クタアト』を携えた海兵隊上がりの美青年を完全に無視して。
麗人は、摘まみとして軽食を。塩を振った落花生とピスタチオ、胡桃の盛られた皿を差し出す。白人は、それを一つ。カリリ、と齧りながら。
「貴方も、後進の指導で? それにしては、随分と風雅を解さない弟子達のようですが」
「殺し屋に風雅なんざ要るかよ。テメェの弟子みたく、周りくどい人格形成なんてのは、力の後でいい」
久方ぶりに再会した昔馴染みと笑い合う、まさにソレ。しかし、端から見れば一触即発。身が震えるほど、心が凍るほど。魂が──狂気に、磨り
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