プロローグ とある王の嘆き
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――■■■■王よ!
――我らの偉大なる王よ!
――王に栄光あれ!
美しい都だ。
父から受け継いだ王位を使って作り上げたこの都は、世界にあるどの都よりも素晴らしいものであると、彼は自負していた。そして、彼の国民、彼の敬愛する神ですら、この都を一番のものだと考えているに違いなかった。
彼は王だった。
この地に生まれ落ちたその時から、彼は王として生きる運命にあった。全てが彼の前に用意されていた。国も、国民も、領土も何もかも。彼は、かの国を更に繁栄させるために生まれた。彼こそが理想の王だと、生まれながら神に祝福された王だと、誰もが疑わなかった。
だが、彼には一つの呪が深く身に刻まれていた。解けることの無い、永遠の苦しみ。それは、彼が生まれながらにして、罪に抱かれていたという事実。彼は愛された。自身の父から、母から、数多くの国民から、そしてこの民を愛する神から。愛されて生まれたはずなのに、自分には消えることの無い罪の烙印が刻まれている。
彼は憎んだ。
自分の人生を。自分の誕生を。罪に抱かれし者が、国を支配できようか。答えは否。なら、自分の罪が消える術を見つければいい。
彼の父親が病に伏した時、彼の神は王に望むものを何でも与えるといった。彼は好機だと信じて疑わなかった。彼は願った。この世の善と悪を見極める「知恵」が欲しいと。彼の賢い選択を、神は喜んだ。そして彼は、世界、宇宙の真理を手に入れた。
彼は父の王国を繁栄させた。その知恵を使って、近隣の国と次々と同盟を結んでいった。彼の栄華は、誰もが賞賛した。だが、彼は満足するどころか絶望していった。
彼は自身に与えられた知恵を使うことで、この世界の理を知ってしまった。そして、自分の死後がどうなってゆくのかさえ。
死の後に待っているのが、永遠に世界に縛られて生きる運命なのだとしたら。愛するものでも、誰でもない、人間の未来という不明瞭なモノのために捧げる命だというのなら。
いっそのこと。
――全部壊してしまおうか。
自分の善行も。自分の神への敬愛も。
自分の生きた証全てを無に帰し、個としての死を迎え、再びこの地に甦る。死によって、自分は無となり、 新しい真っ新な生を再び授かる。なんてそれは、甘美な選択だろう。
おもむろに王は玉座から立ち上がった。
今まで王に、国の財政について話していた臣下たちは、訝しげに彼を見る。突然の王の行動の真意を問おうと、一人が歩を進めた時。
王の美しい銀の瞳は、狂気に染まる。濁り、光を失ったその瞳にあるのは、絶望と無だけだ。
「燃やせ、そうだ、燃やすんだ【アモン】」
王はゆっくりと手を臣下たちに向ける。手から滑るように流れていく炎。その動きの美しさに、臣下たちは動けずにいた。まるで悪
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