暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
神意の祭典篇
36.暁の帝国
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と萌葱は、呆れたように溜息を吐いた。すると研究室の扉が開け放たれる。
「あっ!? やっと見つけました」
「げっ!? 彩音!」
銀色の髪を揺らしながら、彩音と呼ばれた少女が神斗へと詰め寄ってくる。
「どこに行ってたんですか? ママが心配してました」
「い、いや……そ、その……」
さすがに二十年前の世界に行っていたなど口が裂けても言えない。答えが出せないまま困惑する神斗。
すると零菜が窓辺へと近づいて、研究室を覆っていたブラインドを勢いよく上げた。
南国の早朝の眩い陽射しが、薄暗い研究室の中を照らし出す。
窓の外に広がっていたのは一面の朝焼けと、視界を埋め尽くす広大な街並みだった。
そこはかつて絃神島と呼ばれていた土地。四基の
超大型浮体式構造物
(
ギガフロート
)
によって構成された人工の島。金属と樹脂と魔術によって造られた“魔族特区”。しかし今やこの街を、絃神島の名前で呼ぶ者はいない。
かつて小さな人工島は二百倍近くまで拡張され、四国に匹敵する面積を手に入れている。五十六万足らずだった人口は、すでに四百万人を超えていた。
そしてなによりも、この土地はすでに日本の領土ではなく、独立地区を与えられているのだ。世界で四番目である
夜の帝国
(
ドミニオン
)
の地位を。
朝陽が長い影を落とす巨大な帝都を見下ろし、零菜は懐かしそうに呟いた。
「ただいま、”
暁の帝国
(
ライヒ・デア・モルゲンロート
)
”──」
偽彩斗が消え去った場所には、男子生徒から奪い取った制服が落ちていた。
撒き散らされた魔力の余韻はすでに消えている。残っているものといえば、先ほどの衝撃波で地面に撒き散らされた体育館の窓ガラスのみだ。
「なんだったんだ、あいつは──」
途方に暮れたような表情で彩斗が空を見上げた。
「わかんない。でも、彩斗君にすごく似てたよね?」
ああ、と彩斗は力なくうなずく。
彼の正体をもう知ることはできないだろう。しかし、またどこかで会えるような気がしていた。それは何年後、何十年後になるかはわからない。
「ていうか、なんでさっき急に飛び出したんだ?」
彩斗は先ほどの友妃がなぜ飛び出したのか疑問だったのだ。彩斗は偽彩斗と拳を交えたが友妃があそこまでムキになることではなかったはずだ。初めて会った相手に“夢幻龍”の刃を向けるなどいつもの彼女ならありえない。
一瞬、この友妃も偽物なのかと思ってしまう。
「だ、だって……」
友妃は恥ずかしがるよう下をうつむいている。その頬はわずかに紅潮している。そして小さな声で呟いた。
「…………友妃って呼ばれた」
「はぁ? なんて言った?」
彩斗が友妃に訊き返す。すると彼女
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