暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
神意の祭典篇
36.暁の帝国
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萌葱(もえぎ)ー、彩音(いろね)零菜(れいな)知らねぇか?」

 黒髪の少年が企業の研究室のような部屋の扉を無造作に開け放つ。
 部屋の中には、金属製の魔具が無数に配置され、複雑な魔法陣が造り上げている。その魔具から伸びるケーブルは几帳面に束ねられて、小型のパソコンに接続されていた。

「入るときはノックぐらいしなさいよね」

 パソコンの前に座っている制服の上に白衣をまとった少女。端整な顔立ちに、華やかな髪型。普通に美人だが、口元の皮肉っぽい微笑のせいで、色気がない。

「はいはい。悪かった。で、知らねぇか?」

「彩音は見てないわね。零菜ならいまさっき飛んだところよ」

 華やかな髪型の女子高生は、パソコンを操作しながら片手間に答える。

「そうか──」

 黒髪の少年はなにかを思いついたように不適な笑みを浮かべる。
 うわぁー、萌葱と呼ばれた白衣の少女は、嫌な予感がするのだった。




 昼休み──
 緒河彩斗と暁古城は昼食用のパンを買うために、購買部へと向かっていた。途中、渡り廊下で隣にいた矢瀬基樹が不意に口を開いた。

「お、姫柊ちゃんだ」

 矢瀬の視線の先には、階段を下りてくる雪菜の姿があった。誰かを探しているのか周囲を見回しながら、彼女は一人で学食の方向へ向かっている。

「相変わらず綺麗な子だなー……一人だけ住んでる世界が違うっつうか。可愛いし細いし顔ちっちぇえし可愛いし。あとちょっと天然入ってるあたりがなんとも」

 その直後。雪菜はいきなりガラス製のドアにぶつかった。
 ごん、と鈍く痛々しい音が、聞こえてくる。

「いや、あれは天然入りすぎだろ……なにやってんだ、あいつは」

 呆れ顔で呟きながら、古城が雪菜のほうへと駆け寄った。それを見ながら彩斗はまた日常に戻ったんだなと感じるの。つい数日前には、錬金術師の事件で彩斗も古城も死にかけることになった。そのときにはいろいろな人に迷惑もかけることになった。
 だから、こんな光景がすごく心地よいのだ。

「はい、問題ありません……このドアって、まだ自動ドアじゃなかったんですね……」

 そう言って雪菜は、学生食堂の入り口ドアに恨みがましい視線を向けている。

「まあ、あんま金のない学校だしなあ……」

 のんびりと歩いてやっと合流した矢瀬が、古城の代わりに答える。
 雪菜はそんな矢瀬を見上げて驚愕する。

「もしかして矢瀬先輩ですか? え、嘘!?」

「なんだよ、今さら。そんな他人行儀な」

 矢瀬が苦笑した。

「だ、だって……痩せてますし。それに髪の毛もふさふさ……」

「は!? ちょっと待った。そういう俺の将来が不安になるような発言はやめてくれる
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