第四章
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第四章
「ただ。あいつが風邪ひいてな」
「ああ、そういえば今日来てないな」
「そうだよな」
「それでなんだよ」
落ち込みきった声でまた言う徹だった。
「どうすればいいんだよ、本当に」
「まあなあ」
「何ていうかな、ここは」
「落ち込むな」
「とりあえずな」
「無理だよ」
本当に沈みきった声での言葉だった。
「どうしろっていうんだよ」
「声だけでも聞ければいいんだけれどな」
一人がこんなことをここで言った。
「それだけでも違うけれどな」
「ああ、そうだな」
「声な」
「声さえ聞ければな」
「全然違うな」
「そうだな」
こう話す。全員でだ。
「じゃあよ、御前携帯に声録音してるか?」
「あの娘の声な」
「どうしてるんだよ、そこは」
「まあ一応はな」
そうしているというのであった。この辺り流石である。
「録音してるからな」
「よし、それじゃあな」
「その録音聞きながらだよ」
「頑張れ」
「ああ、わかった」
とりあえずだ。実際に自分の携帯を取り出してだ。それで彼女の声を聞いた。
「本当に録音してるからなあ」
「何ていうかな」
「それ着メロにしてるだろ」
「ああ、してる」
実際にそうだというのである。
「声を聞くだけで幸せになれるからな」
「だからか」
「予想はしてたけれどな」
「それでも何かな」
「徹底してるな」
そこにだ。誰もが中毒患者を見ていた。
その中毒患者は声を何度も聴く。するとだ。
顔色が少し戻った。それでこんなことを言うのであった。
「よし、それじゃあな」
「元気出たか」
「そうなんだな」
「ああ、出た」
実際にそうだというのである。確かに顔色が幾分か戻っている。
そしてその顔でだ。また言う彼であった。
「試合な」
「そうだよ、それだよ」
「もうすぐだぜ」
「頼むぜ、エースなんだからな」
「ここまできたら勝ちたいからな」
皆だ。この考えは一致していた。
「コンディションしっかりとな」
「メンタルからだからな」
「だからしっかりしてくれよ」
「そこは」
「ああ、絶対に勝つからな」
徹にしてもだ。それはよくわかっていた。彼がそのエースだからだ。
それでだ。彼はまた言うのだった。
「この声を聞いてな」
「しっかりしてくれよ」
「次勝てば甲子園だからな」
「それだから余計にな」
「頼んだぞ」
周りも真剣である。何しろ甲子園がかかっているからだ。
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