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乱世の確率事象改変
泥を踏み抜き光を求む
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顔を覚えられる。
 白蓮とは真逆……そう、取る事も出来る。
 コツコツと己が努力を積み上げて深い絆を繋ぐ彼女と違い、名家の威光と代をおって作られて来た問題の無い生活基準の上に財力とインパクトを以って浅く広く絆を繋ぐ。
 言うなれば、大枚を叩いて絆や信頼、風評といった無形の財産を買っている。金という力は、何時の時代も使い勝手がいい。
 麗羽に対する人気は、こうして積み上げられていく。

「おーっほっほっほ! おーっほっほっほ!」

 高笑いを耳にして、居並ぶ民達には手を振るモノもある程度いる。唯の勘違いしたバカなどでは無い為に、“しっ、見ちゃいけません”と言うモノも居ない。
 怨み憎む貧しい者達もいる。だが、そんなモノが居るのは世の常。生活がちゃんと出来ているモノが圧倒的に多いこの街の中で、その少数は淘汰されていくだけ。弱肉強食は人間社会でも適応される。
 全てを助けろ、などと真正面から口に出来るのは政治を知らない偽善に染まった愚か者か、救済を為した事があり、且つそれを出来うるだけの力を持っている者くらいではなかろうか。
 政治は感情論や綺麗事では出来ない。ただ、厄介な事に、民の側に立つ王たちは絆を繋いでそれを覆し……後に人の本質という現実に打ちのめされてゆっくりと世界を腐敗させていくモノが圧倒的多数であるから恐ろしいのだが。

 一通り街々を巡って袁本初の威光を知らしめた後に、城へと戻った麗羽は背筋を伸ばし、

「ご苦労様。それではごきげんよう」

 ふっと微笑みを残し、優雅に、優美な動作で身を翻し、頭を垂れる男達を置いて居城の中へと進んで行く。給金を手渡すのは下々の役目。わざわざ口にするまでも無い。
 廊下を歩けば、上層部の手の及ばぬ下級文官達からは、にこやかに挨拶をされる。品のある微笑みを返すだけで、彼女は進んで行く。
 奥に行けば行く程に昏い暗い闇の園。それが袁家。彼女はその中心に据えられた傀儡。微笑みを崩す事は無く、品位を下げる事も無く、“袁本初”という役割を演じ切る。幼少期から作り上げてきた仮面は厚く固く、もはや切り替えるまでも無く、どちらもが自分であると言えるかもしれない。
 そんな彼女は今日の午後、二人の友と細やかなお茶会を予定していた。
 袁家に仕える武官、顔良と文醜――――斗詩と猪々子。
 麗羽がバカを演じている事に気付かず、疑わず……秘密を明かされても、『やっぱり姫はバカだなぁ』『何も変わらないじゃないですか』と、態度も向ける想いも同じままで、慕って付き従ってきた二人であった。
 くるりと右に曲がり、中庭へと進んで行き、東屋に視線を向けた麗羽はいつもと同じ微笑みであれど生気が宿る。

「あ! ひめっ……っ……いってぇ!」
「ぶ、文ちゃん、大丈夫?」
「にしし、問題ないぜ。姫ーっ! 遅い
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