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ゾンビの世界は意外に余裕だった
3話、ファーストコンタクト
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北武蔵大学三年の北原です」

「学生さんか。一応ここは国有地なんですが御用件はなんでしょうか」
「その、すみません。立派な建物を見かけたんで、ひょっとしたら食べ物がないかと思って……」

「えっ、食べ物? もうご飯がないのか」

 思わずタメ語になってしまう。まあいいか一回り年下だし。

「ええ、五人でこの先の友達の別荘に逃げたまでは良いんですが、食糧がつきてしまい。男二人で食糧探しに出たんです」
「男二人? まさか二手に別れたのか」
「いえ、この施設を見て入りたくないと言ったので、彼を車に残して僕だけが様子を見に来たんです」

 さすがにリアル・ゾンビの世界で二手に分かれるほど馬鹿ではないようだ。いや、ここに一人だけで突撃せるような奴を頭の良し悪しで判断するわけにはいかない。もちろん、この学生の話も盛っている可能性もある。

「いや君は勇敢なようだね、ちょっと失礼するよ」

 俺とレグロンは照れている北原君から離れて、相談を始めた。

「レグロン?」
「嘘の可能性は低いです」
「友達の話もか」
「そこが一番嘘の可能性が低いです」

 俺は急に北原君に同情したくなってしまった。

「北原君。レトルト食品や真空パックご飯、水などを一週間分くらい分けて上げるよ」

 俺はレグロンを連れて再び北原君に近づいた。

「本当ですか。ありがとうございます」 

「君がここで食べていくなら用意するよ」 
「いえ、みんなで食べたいので」

「じゃあ、そのリュックサックを借りようかな」「はい」

 あっさり借りられたナップサックには小さな缶詰めが三個ほど入っていた。この人の良過ぎる学生の将来が心配になる。俺は騙して缶詰めを取り上げるつもりはないが、悪意ある人に遭遇したら痛い目にあうだろう。

「レグロン、私が食糧を取ってくるから、お前はこちらの情報をなるべく与えず、向こうの情報を聞きだしてくれ」

 一緒に車に乗り込もうとするレグロンを留め、俺は使命を与えた。

「ボス。一人は危険です」
「わかっている。だが、キャリーは監視カメラを制御している。通信端末をオンにしておけば、脅威に十分対処できる」
「仕方がありません。ですが、やはり他のアンドロイドを稼働させるべきです」
「わかった。そうだな明日の朝、テレビで朗報を伝えていなかったら稼働させる」

 人口知能の性能が向上した結果、ご主人様に物を言うアンドロイドは標準仕様だ。

 一人で食堂に戻った俺は、大嫌いな麻婆ナスやナスサラダなどのレトルト食品やミネラルウォーターをナップサックに次々と詰め込む。そこで相手が若い学生と思いだして牛丼やコーラを入れる。ついで非常食やラジオなどが入っている非常袋を一つ取り出した。これだけあれば五人で食べても十日間くらいは持つだろう。

「こんなに……」
「ここの所員は二日前にほとんど出ていったから
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