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エンジェルボイス
第一章
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第一章

                       エンジェルボイス
 とにかくだ。極めつけの美声であった。
 放送室から聞こえるその声はだ。誰が聞いてもだった。
「可愛い声だよなあ」
「ああ、アニメのキャラみたいなな」
「奇麗だし可愛い」
「澄んだ声だよ」
「本当にな」
 皆その声を聞いてこう話す。
「放送部の娘だよな」
「ああ、一年のな」
「名前は確か」
「中田っていったか?」
 その名前についても話される。
「中田理恵っていったか」
「中田理恵っていうのか」
「そういう名前なんだ」
 その名前がだ。皆に知られるのだった。
「それで放送部の一年か」
「成程な」
「とにかく声が奇麗な娘だよな」
「本当にな」
 皆の間にだ。その理恵の名前が知られるようになった。そしてその中にはだ。
 同じ一年のだ。彼もいた。
 柳田徹という。彼は野球部だ。
 しかも黄金の左腕とまで呼ばれている。一年でいきなりエースに抜擢されている。
 荒々しい鬣の如き黒髪と燃える様に熱い目、それと精悍な顔をしている。背は普通位だがそれでもだ。運動能力と体力からピッチャーになっているのだ。
 その彼がだ。理恵の名前を聞いて言うのだった。
「そうか、中田理恵っていうんだな」
「って何だよ」
「いきなり部室で叫ぶなよ」
「叫ぶのはグラウンドにしとけよ」
 部活をはじめる前の部室においてだ。彼は着替え中の部員達に言われた。ロッカーの他は古いクラスにある様な机や椅子がある。コンクリートの壁には目指せ甲子園といった言葉が書かれている。
 そうしたありきたりの部室の中でだ。彼はまだ着替え中でトランクスやら上半身裸やらの仲間達に突っ込みを入れられたのである。
「御前もさっさと着替えろよ」
「その猛虎のトランクスからな」
「気が得て部活に出るぞ」
「早くな」
「いや、だからあの放送の娘だよ」
 その彼等にだ。まだ言う彼だった。
「そうか。中田理恵さんっていうんだな」
「何ていうかな。独特な声だよな」
「高くて細い感じもするしな」
「小さな女の子みたいなな」
「そんな感じのな」
「ああ、本当にいい声だ」
 また言う彼だった。
「わかった。それならな」
「それならってな」
「一体何するんだよ」
「それで」
「またあの声を聞きたいな」
 何故かだ。徹はここでこんなことを言った。
「是非な」
「そんなのまた聞けるだろ」
「なあ。放送部なんだからな」
「今だってな」
「聞けるだろ」
「放課後を知らせる放送でな」
 その放送がだ。もう少しでかかるというのだ。
「なら聞けばいいだろ」
「またすぐにな」
「聞けるだろ」
「ああ、そうだな」
 徹は部員達の言葉に頷いてだ。そしてだ。
 そ
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