肉のない青椒肉絲はいかが?
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えぇぇっ!? こ、ここでそんなこと言われましても……」
口の端がぴくりと歪んだ珠希の眼前、とにかく押しが強く精神年齢の低い母親・彩姫に迫られ、小動物系の臭いがする担当編集者・汐里は珠希のほうをちらちらと見ながら一定の距離を保とうと後ずさる。
おいコラこの年中色ボケ母親、なに自分の担当編集者をレ○ビアンにオトそうとしてんだ?
それに小動物系担当編集、あんたはあんたでカレシいるとか言ってなかったか?
「ねーえ、しおりん。今日も泊まってってくれないかなぁ?」
「き、今日もですかっ?」
「そ。だってしおりんの反応がカワイイんだもん」
「で、でも今日はカレと会う約束がありまして……」
眼前の二人、怒られていることもすっかり忘れている様子なので、珠希は無言で席を立つと、母親の仮眠室となっている隣室の押入れの中からとある物を手に取った。それは昔、珠希が何に使うかわからなかったものであり、その用途がわかった今では思わず赤面してしまうときもあるが、今以上にこれが役立つこともないだろう。
「そんなぁ。しおりんはわたしとカレとどっちが大事なの?」
「そ、それは……えと、えっと……」
仮眠室から仕事部屋に戻ると、正座させていたはずの二人はすっかり先程の――珠希が部屋に突入したときの――乳繰り合いに似た態勢に入っており、今すぐにでも彩姫の手が汐里のスーツの胸元を侵食しようとしていた。
ダメだこの母。実年齢はアラフィフなのに理性がまるで機能していない。頭の中はヤりたい盛りの思春期男子並みで、口調や声色は年齢一桁の子供だ。
そしてそんなダメ母の押しに負けている担当編集者も残念ながらアウトだ。
――というわけで、今珠希がすべきことはひとつ。
「いい加減にしろあんたらぁぁッッッ!!!」
「ひぃッ!?」
「ひゃあっ!!」
これで帰宅後もう何度目の叫びかわからない。
だが珠希が大きく振りかぶった右腕を振り下ろすと、風を切る音と同時に、まるで電気が火花を散らしたような音がその場に響いた。
「お二人とも、今自分が置かれている状況というものを理解されていないようですね」
珠希が頭を抱えるもう一つの理由は、母親の職業。
前述したとおり、珠希の母親・彩姫は家でもできる――むしろ家以外のどこでできるのか教えてほしい――仕事に就いている。
「い、いいえぇ……。そ、そんなことな、な、ななないわよ珠希ちゃん」
「せ、せんせぃぃぃ、声がふふふ、震えてますよぉ……」
珠希が手に持ったそれをぎりりと絞るように音を立てると、その音に身をすくませて二人はすっかり生気のない作り笑顔を浮かべご機嫌取りに走る。
「ね、ねえ珠希ちゃん?」
「なんでしょうか?」
「
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