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【短編】竜門珠希は『普通』になれない【完結】
肉のない青椒肉絲はいかが?
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な汚い言葉を使ってはせっかくの美少女面が台無しである。実際、そのクソ親の遺伝子のおかげで珠希はイージーモードを満喫できるだけのスペックを持って生まれてきたはずだが、基本スペックが高くてもそれを最大限活用できているかどうかはまったく別の話だった。
 何であんなモノが、何であんなモノが――と心の中で何度も恨み節を呟きながら、珠希は冷蔵庫のドアを叩きつけるように閉めると、夏向けにミントの香りを織り交ぜたフレーバーティーを飲むのも忘れ、とめどなく湧き上がってくる怒りの感情をとても清楚系――と周囲から見られていると思いたい――10代女子のものとは程遠い、まるで5倍速で大都市・東京へ侵攻するゴジ○のような足音に変え、一直線に家のとある場所に向かった。

「お母さんッ!!」

 珠希が向かった先は母親の仕事部屋。在宅でもできる――むしろ在宅でしかできないと思う――仕事に就いている珠希の母親がリビングで暇潰し(グダグダ)していないとなると、外出とトイレと風呂以外では仕事部屋(ここ)くらいしかなかった。
 そして緊急の家宅捜索(ガサ入れ)かと思うくらい乱暴にドアを思い切り開き、再び絶句する羽目になった。

「ほら、ココが気持ちいいんでしょう?」
「あ……ッ。そ、そんな……やめてくさだいっ」
「本当にいいの? やめちゃって」

 絶句する珠希の前で繰り広げられる乳繰り合い。しかしながら乳繰り合っているのは女性と女性であった。

「ホラ、アナタのココはそう言ってないみたいよ」
「……ッ! そ、そんな……ァッ」

 粘り気のある水音、艶めいた声とそこに紛れる荒い吐息――をこの部屋にもたらしているのは真っ白い襦袢を着た妖艶な雰囲気の女性と、濃紺の生地にグレーのストライプが入ったスーツ姿の黒縁眼鏡の女性。

「……っな、な、ななな……」

 帰宅して冷蔵庫を開けたらなぜかおっ○いマウスパッド。そこで怒りの形相で母親の仕事部屋に乗り込めばなぜかそこでレ○シーンに遭遇。ここで早くも精神状態が限界を振り切ってしまった珠希は、隣三軒、道路向こう三軒まで響くかのような声で叫んだ。

「っま、真ッ昼間から発情(サカ)ってんじゃないわよいい大人がぁぁぁッッッ!!!!」



  ☆  ☆  ☆



 珠希の家、竜門家は周囲の家よりも広く立派である。
 敷地は瓦葺きの漆喰の外壁に囲われ、木製の門扉を開けると整然と揃えられた植え込みと石畳に導かれるように装飾が施された硝子戸の玄関に続く。しかも三和土(たたき)は三、四十足は靴が置けるほど広い。そのうえ築山まで拵えた日本庭園や現役で使用可能な土倉まである。だがまるで映画や漫画にありがち(・・・・)な極道者が住む家屋だとは口が裂けても出してはいけない。この豪勢な家屋に気後れして離れてい
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