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二者択一
第一章

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第一章

                      二者択一
 この時だ。彼は悩んでいた。
 首藤将暉は大学生だ。少しだけ吊りあがったはっきりとした二重の目に眉間から端にいくにつれ濃くなって太くなる眉を持っている。顔立ちは涼しげで唇は薄いピンクだ。細い頬をしていて黒い髪から見える耳が大きい。
 背は普通位で整ったスタイルである。その彼が今悩んでいた。
 その彼にだ。ほぼ同じ顔の母が尋ねた。
「どうしたのよ、一体」
「うん、実は」
 彼はその母に悩みを打ち明けようかと考えた。少し考えてからこう言うのだった。
「好きな人がいるんだ」
「あら、あんたもそういう人ができたの」
 母はそれを聞いて興味深そうな声をあげた。
「よかったじゃない」
「ううん、それはそうだけれど」
「何か嫌なの?」
「嫌じゃないよ」
 それは否定するのだった。
「ただね」
「ただ?」
「二人いるんだ」
 こう言うのだった。
「実は」
「二股とかいうの?」
「そうなるかな。同じ大学の娘でさ」
 その娘がどういった娘なのかも話すのだった。
「どっちもね」
「どっちもなの」
「一人は白い可愛い服を着てさ」
 ここから話すのだった。
「凄く可愛い女の子なんだ」
「そうなの」
「そしてもう一人は」
 もう一方の娘についても話すのだった。
「黒い。ええと」
「黒い?」
「ゴスロリっていうのかな」
 その娘の服装を思い出しての言葉だった。
「そういう服の女の子でさ」
「その娘もなのね」
「どっちもさ」
 彼は言うのだった。
「凄く可愛いんだよね」
「二人共好きなのね」
「大好きだよ」
 実際にそうだというのである。
「いや、本当に」
「けれど相手はね」
「一人じゃないといけないしね」
「付き合うなら一人にしておきなさいよ」
 母の言葉はここでは忠告になっていた。
「それは絶対にね
「二股はよくないよね」
「よくないし災いの元よ」
 そうだというのである。
「それはね」
「ああ、やっぱり」
「どっちかにしなさい」
 母の言葉は強いものになった。
「いいわね、それで」
「うん、わかったよ」
「それでどちらにするの?」
 もう早速このことを問う母だった。
「それで」
「ううん、そうだな」
 彼はここで考えたのだった。そうしてだ。

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