第一部 刻の鼓動
第三章 メズーン・メックス
第四節 離脱 第二話 (通算第57話)
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メガ粒子の火閃が《リックディアス》の残像を貫いた。減衰したビームが四散するまで細長く尾を引く。
背後に迫る敵は二個小隊――《クウェル》が四機と《ジムII》が四機だ。MS戦では当たり前だが、数が決め手になる。常識を覆すような事態はニュータイプでも居なければ起こりえない。
メズーンは思わずアクセルを目一杯踏み込んでいた。機体が急加速する。強烈なGがメズーンをリニアシートに縛りつけた。多少は衝撃緩和装置が吸収するが、全てではない。身体中の血液が全て背中側に行ってしまったかのような感覚に一瞬気を失いそうになったが、メズーンとてパイロットだ。耐えられないレベルではなかった。
その最中、メズーンはライフルを構えさせようとして気づいた。《ガンダム》はビームライフルを手にしていない。兵器ラックから持ち出してこなかったのだ。《マークII》には初代《ガンダム》以来《ジムII》にも標準装備されている頭部六○ミリガトリング砲もない。メンテナンス直前の機体を奪取したのであるから、当然と言えば当然である。自分の迂闊さをメズーンは呪った。
バックパックのスラスターアームに固定されているビームサーベルだけが《マークII》の標準装備である。固定武装を廃し、武装を共通化することでコストダウンを図り、MSが持つ本来の汎用性の向上と拡張性の確保を目的とした試作機が《マークII》だった。後のユニバーサル仕様の原点が此処にある。両腕と腰の両側にあるマウントラッチが連邦軍の標準プラットホームになる。
「……赤いMSは?」
メズーンに嫌な予感が過る。まさか撃墜されたのか…という言葉を呑み込む。直後、後方八時に未確認機の表示がコンソールを確認し、安堵した。
それは推力を分散して機体の運動性能を高め、単体での戦闘力を求めた《リックディアス》と、推力を集中して、機体の現地到達速度を高め、集団での戦闘力を求めた《マークII》の最大の違いと言えた。だが、《マークII》の機動性が《リックディアス》に劣る――という訳でもない。
突然、炎の玉が闇を切り裂く。
シャアの《リックディアス》が振り向き様に敵機を射ったのだ。狙いを違えずに命中する。紫の《ジムII》がコクピットに直撃を喰らい爆散した。
「凄い……」
機動中のMSに命中させることは至難の技である。バディが追い込んだ所を狙撃するのであっても、一撃必中とはいかない。なのに、続けざまに放たれたクレイバズーカの弾頭は、吸い込まれるように敵機を直撃していった。
漆黒の宇宙に三輪の大花火が咲いた。
その間も《リックディアス》はランダムな機動を続けていた。宇宙では真後ろを取られたら撃墜される。メズーンは必死に軌跡をトレースしていたが、どうしても機体が直線的になりがちであった。
(赤いMSは、なんであんな軌道を取れるんだ……!?)
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