暁 〜小説投稿サイト〜
機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第一部 刻の鼓動
第三章 メズーン・メックス
第四節 離脱 第二話 (通算第57話)
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話

 メズーンには神業を見せつけられているように感じられた。敵の攻撃の二手三手先を読んでいるかのような機動にメズーンは翻弄されていた。だが、至近にいるメズーンですら翻弄されているということは、離れた敵は予測不可能になる。
(だから、赤いMSは俺の知らない軌道を取る……まるで……)
 赤い彗星。ジオン公国のエースパイロットにしてジオン共和国の英雄たるシャア・アズナブルそのものだ。
 赤いMSにこの動き、冗談でも本人であると言われても否定するのは難しい。再度浮かんだ名前ににメズーン自身驚きを隠せなかった。
 彼が赤い彗星ならば、敵が多くてもなんとかなるかも知れない――そんな考えも浮かばないではなかった。だが、彼が撃墜したのは三機は《ジムII》だけである。四機の《クゥエル》は無傷のままだ。彼我の戦力比は幾分縮まってはいるものの、依然として不利な状況に変わりはない。
 だが、シャアの目論見通り、敵は《マークII》の奪還を目的としており、メズーン機への砲火は牽制以外にはない。故にメズーンのことはさして考慮に入れる必要はなかった。これならば、逃げ切れるとシャアは断定した。
「メズーン君、もうすぐ《アーガマ》との合流ポイントだ。振り切るぞ!」
「了解、スラスター全開します!」
 シャアの意図をメズーンも理解できた。二機の推力を合わせて《アーガマ》の防衛ラインに飛び込もうということである。こちらが推進剤の残量を気にせず、使いきってしまえば、敵は母艦との距離を気にするはずだからだ。
 メズーンは《アーガマ》が機動母艦であることを知らされている。とすれば、MS搭載数は推測できた。現状、機動母艦のクラスは連邦軍のペガサス改級とティターンズのアレキサンドリア級だけで、新造艦が建造されているのはアレキサンドリア級だけである。機動戦艦が二機、機動巡航艦が六機、機動母艦が十機――というのが現在の一般的なMS搭載数である。シャアを含め三機以外に七機の艦載MSを持っているはずだ。
 想像の翼がそこに至って、怯えはなくなり、撃墜された機体が自分がいた小隊であったかどうかを気にする余裕も生まれた。
 だが、最大望遠でもパーソナルエンブレムや部隊マークまでは判別できない。かといって、接近すれば捕捉されてしまう。それでは、これだけの騒ぎを起こした意味が失せてしまう。今は逃げ切ることだけを考えなければならなかった。
 一つの塊と化した二機のMSは光の尾を伸ばして闇を駈ける一条の矢となった。
 その先には白亜の艦《アーガマ》がいた。 
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ