第一部 刻の鼓動
第三章 メズーン・メックス
第四節 離脱 第一話 (通算第56話)
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れではせっかく奪った《ガンダム》を《アーガマ》に――いや、エゥーゴに持ち帰ることはできなくなる。危険を犯しても味方を呼ぶべきか、否か。
バックアップのレコアたちを呼べばメズーンを合わせて七機になる。メズーンを中心に円陣隊形で行けば、突破は容易なのではないか――いや、位置を知られ集中砲火の的になりかねない。シャアは首を振って自らの考えを否定した。
「アポリー!ロベルトと共に《ガンダム》を抱えてレコアと合流しろ」
「了解……ですが、大尉は?」
アポリーの心配は無論メズーンである。シャア独りならば心配する必要はない。シャアは《赤い彗星》のシャアなのだから。メズーンがシャアの足手まといになることが、懸念されるのだ。
二手に別れる――それがシャアの決断だった。敵にアムロ・レイはいないのだ。メズーン独りならばなんとでもなると肚を括った。最悪、どちらかの《ガンダム》だけでも確保できれば、作戦は成功なのである。
「心配いらん。私を誰だと思っている?」
見捨てる覚悟。
戦場で最も指揮官が持たねばならぬものではある。だが、なかなか実践できる者は少ない。が、ために戦いに敗れた者も多い。
シャアは冷徹であり、敵に対して容赦はないが、部下や仲間を大切にする傾向がある。既にシャアにとってはメズーンも仲間だ。最大限の努力を尽くそうとしていた。
それに、ティターンズが虎の子の《ガンダム》を撃墜することもないだろうという思いもある。要はメズーンではなく、自分を狙ってくるという確信であった。
「では、《アーガマ》で!」
アポリーとロベルトがスラスターを全開にして離れる。シャアは小刻みに機動を繰り返しながら、合流地点へ迂路を採った。端から見れば、ランダムに転進しているだけの様に見える。特に、素人に毛の生えたようなメズーンでは、その機動をトレースすることなど到底できるものではない。
「くっ……」
急加速したかと思えば急制動、急旋回。サイドスリップしながら、逆方向に最大加速。常にその行動は、次の次の動きを視野に入れたものであり、コンピュータの予測範囲を超えた機動制御だ。熟練のパイロットでもトレースすることさえ難しい。
(なんて機動制御なんだ…MSを手足なんてものじゃない!自分の体のそのものじゃないか……)
まるでニュータイプの様である。
いや、事実ニュータイプとしか考えられなかった。まるでジオンの《赤い彗星》。
メズーンの震えは止まっていた。
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