第二章
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第二章
「一緒にいたいのよ」
「一緒にか」
「そう、一緒にね」
こうだ。俺に微笑んで話してきた。雨は今も降っていて俺達を打っている。その中でだ。こいつは俺を見て。そうして微笑んできた。
その微笑みを受けて俺も微笑み返して。俺は言った。
「そうか。それじゃあな」
「それじゃあ?」
「乗れよ」
俺はこう告げた。
「後ろ。空いてるぜ」
「バイクの後ろね」
「ああ、ヘルメットもあるぜ」
それは席の中にある。そこにいつも二つ入れている。俺とこいつのものだ。それはいつもだ。このバイクの中に入れている。
その席から実際にヘルメットを出して手渡して。それから述べた。
「乗れよ」
「うん」
「それで何処に行くんだ?」
「何処でもいいわ」
俺に顔を向けて。笑顔で言ってきた。
「貴方の好きな場所に」
「そうか。何処でもいいんだな」
「好きな場所に連れて行って」
また俺に言ってきた。
「貴方の。好きな場所に」
「そうか。じゃあな」
「ええ。それじゃあ」
こうしてだ。俺はヘルメットを被ったこいつを後ろに乗せてそれからだ。
またバイクを飛ばした。夜の道をかっ飛んでいく。その道は左右が照らされ車の灯りが前から後ろに消えていく。その中をだ。
俺達は飛んでいく。ただひたすら。
後ろからだ。こいつが俺に尋ねてきた。
「朝まで走らせるのね」
「ああ、行けるところまでな」
「そうなのね。朝まで」
「ああ、とことんまで走るぜ」
俺は不敵な声で告げた。
「本当にとことんまでな」
「だったら私も」
「御前もか」
「ええ。最後まで一緒にいるわ」
声が笑っていた。それで俺に話してきた。
「最後までね」
「そうさせてもらうわ」
「悪いな。そういえばな」
「そういえば?」
「もうすぐ夏が終わるな」
そのだ。夏がだ。もうすぐ終わる。
それで秋になる。となるとこの雨は。
「この雨が止んだら。秋だよな」
「そうよね。大雨が降ったらそれで季節が変わるっていうしね」
「そうだよ。だからな」
「この雨が終わったら」
「じゃあ。秋まで走るのね」
問いが変わった。こうだ。
「私達、秋まで走るのね」
「夏の終わりから秋のはじまりにな」
走る。そう決めた。
それでだった。俺はさらにバイクを飛ばした。雨はまだ降り続ける。
それでも走り続けて。辿り着いたのは。
そこは朝だった。そして秋でもある場所だった。
そこに二人で辿り着いたその時。雨はもう止んでいた。
空は白い。雨が降り止み白い朝の空がそこにあった。
俺達は走り続けて朝に辿り着いた。秋に。
そこでようやく二人でバイクを降りて。俺はこいつに問うた。
「辿り着いたな」
「ええ」
「二人で秋に来たな」
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