第一章
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第一章
DAY BREAK
俺は引き返した。バイクを思いきり反転させた。
その反転させたバイクでだ。向かうのは。
あいつのいる場所だ。今別れたあいつがいる場所。そこにバイクを飛ばした。
反転させたその瞬間にだ。雨が降ってきた。
雨は横殴りに俺に向かって来る。けれど今の俺にはもう関係なかった。
それでだ。雨に向かいながら。
それを突き破って前に突き進んで。あいつのところを目指した。
車も抜かしていってそうして辿り着いた場所にだ。あいつがいた。
まだ残っていたあいつは。俺を見て驚きの声をあげてきた。
「えっ、どうして」
「済まなかったな」
こうだ。俺は言った。
「あんなこと言ってな」
「どうして戻って来たの?」
「気が変わった」
こうだ。俺はヘルメットを脱ぎながら答えた。
「思いなおしたって言う方がいいか?」
「思いなおしたって?」
「やっぱり御前が好きだ」
俺はバイクに乗ったままこいつに顔を向けて話した。
「俺はな。ずっとな」
「私が好きって」
「ああ、駄目か」
目を見て。そうして尋ね返した。
「俺が御前を好きで」
「いいえ」
違うとだ。こいつも言ってくれた。首を横に振ってから。
「有り難う」
「有り難うか」
「そう、有り難う」
微笑んでだ。俺に言ってくれる。
「戻って来てくれて」
「何で待ってたんだ?」
俺は今度はこう尋ね返した。
「あのまま帰らなかったんだ?」
「何となく」
「何となく?」
「そうなの。何となくなの」
こうだ。俺に答えてくる。
「あのままお別れって。嫌だったから」
「それでか」
「それでここにいたの」
ここにも雨は降ってくる。俺達が今いる喫茶店の駐車場は雨浸しになっている。夜のアスファルトは灯りに照らされ雨が見える。雨が海みたいになっている。
その中に立つこいつは。俺に話すのだった。
「そうだったのよ」
「それでなんだな」
「ええ。帰るつもりはなかったわ」
「それがよかったんだな」
俺もヘルメットを脱いでいて。水浸しになっている。その中での言葉だ。
「それで俺が心変わりしてな」
「心変わりだったの」
「いや、違うかもな」
言われて。ふと思いなおした。
それでだ。俺は話した。
「正直になったんだな」
「正直になの」
「御前言ってくれたよな」
今度はこうだ。こいつに言った。
「夢見てる人間って嫌いじゃないって」
「ええ」
「そうだったよな。そんなこと言ってくれたのはな」
「私だけだったの?」
「ああ、御前だけだった」
その通りだとだ。俺は答えた。
「他の奴は皆馬鹿にするからな」
「だって。それが貴方の夢なのよね」
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