第七話 暴発
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からマントを羽織った爺さんが現れた。右手にはサバイバルナイフを逆手で持っている。キルヒアイス! 態勢を崩している! 爺さんの倒した男の身体が邪魔だ! 襲撃者のナイフが迫る! ブラスターを撃った、命中! 側頭部を撃たれた敵が横倒しに倒れた。
「ミューゼル、伯爵夫人を守れ」
「しかし」
「邪魔なんだよ、お前が死んだらロイエンタールとミッターマイヤーも死ぬことになるんだ。分からねえのか!」
爺さんが周囲を警戒しながら言った。キルヒアイスが“ラインハルト様”と声をかけてきた。爺さんの言う通りにしろ、眼がそう言っている。
「済まない、頼む」
不本意だが後ろに下がった。雨と闇の中に爺さんとキルヒアイスの背中が滲んで見えた。
「撃つんじゃねえぞ、ミューゼル。同士討ちは御免だ。そこで黙って見ていろ、もう直ぐ味方が来るからな」
大きい声だ、多分敵に聞かせるためだろう。爺さんは連中を焦らせようとしている。相変らず喰えない爺さんだ。こんな時なのに笑いが込み上げてきた。
爺さんの左側面と正面に影が近付いた。爺さんは腰を落として様子を窺っている。大丈夫か? キルヒアイスがナイフを突き出してきた男の腕を手繰り寄せるとブラスターを側頭部に叩き付けるのが見えた。崩れ落ちる男の手からナイフを奪う。接近戦ならブラスターよりもナイフだ。
爺さんの側面の男が斜め後ろに動こうとした。爺さんの背後を取ろうというのか、それとも狙いは俺か。爺さんが身体を時計回りに反転させた、速い! 身体を沈ませ思いっ切り右足を延ばして男の足を払う。男が飛び退いて躱した。正面の男が爺さんの背中に迫る! 爺さんが前方に回転して距離を稼ぐ、振り向いて構えた! 正面から迫った男が止まった。なるほど、これなら同士討ちを心配するはずだ、それほどに爺さんの動きは速い。
凄い、本当に六十歳なのか? どう見ても二十代から三十代の動きだ、しかもかなり鍛えている。側面と正面からまた敵が迫る。側面の男は明らかに爺さんを標的にしている。手強いと見たのだ、先に爺さんを殺してから正面の男と共に俺を殺すつもりに違いない。正面の男と側面の男がナイフを突き出すそぶりをする。フェイントだ、連携して爺さんを揺さぶろうとしている。しかし時間が無いのも分かっているだろう、直ぐに仕掛けて来る筈だ。
爺さんは動かない。腰を落として正面の男に正対している。手強いのは正面と見たか、或いは側面の男を挑発しているのか。右手に握ったナイフは相変わらず逆手、防御優先だ。時間を稼ぐつもりかもしれない。相手は二人とも順手でナイフを持っている、どちらかが攻めてくる。それに合わせてもう一方も動くだろう。
動かない爺さんに焦れたのだろう、側面の男がフェイントから鋭く踏み込んで突いて来た。爺さんが時計回りに身体を反転させる、上手い! これ
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