暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝
第百七十六話 手取川の合戦その一

[8]前話 [2]次話
         第百七十六話  手取川の合戦
 朝になった、その日の出と共にだった。
 謙信は己の将兵達にこう言った、既に馬上にいる。
「もう食べましたね」
「はい、飯を」
「今しがた」
「ならよいです」
 周りの言葉を聞いてだ、謙信もよしとした。
「腹が減ってはです」
「何も出来ない」
「戦もですね」
「そうです、ですから」
 それ故にというのだ。
「それでは今から」
「今からですね」
「織田家との戦を」
「はじめます」
 まさにというのだ。
「ではいいですね、わたくしが先陣を務めます」
「先の戦と同じく」
「そうされますか」
「そうです、では行きましょう」
 謙信は自ら軍の先頭に立った、そしてだった。
 上杉軍は日の出と共に動いた、それは織田軍も同じだった。
 彼等も暗いうちに起きてだった、そのうえで。
 具足を漬け飯を食った、信長も同じだった。
 信長は日の出を前にしている中でだ、自身の将兵達に言った。
「ではな」
「はい、日の出と共に」
「戦ですな」
「上杉軍が来る」
「それを迎え撃ちますか」
「そうじゃ」
 そのことがわかっている、そのうえでの言葉だった。
「あの者から来る」
「そしてですな」
「我等はそれを迎え撃ち」
「戦うのですな」
「既に備えはしておる」
 信長は確かな顔で諸将に答えた。
「後はじゃ」
「戦をしてですか」
「ここから退かぬ」
「そうすることですな」
「加賀を手に入れる為に」
「これからの為に」
「後ろは川じゃ」
 柴田と同じこともだ、信長は言った。
「わかっておるな、生きたければじゃ」
「退かずに戦う」
「それしかありませぬな」
「上杉謙信と」
「そうするしか」
「そうじゃ、戦うのじゃ」
 まさにだ、生きる為にというのだ。
「無論わしも同じじゃ、生きる為にはな」
「戦い、ですな」
「負けぬことですな」
「安心せよ、負けることはない」
 相手が謙信であってもだというのだ。
「わしの備えは既に整えておる」
「あれですな」
「あれは既に用意されている」
「だからですな」
「そうじゃ、あれがある」
 目の前のそれを、まだ暗がりの中ではっきりとは見えないそれを見ながらの言葉である。
「あれがあれば敵は陣に入ることは出来ぬ」
「ですな、あれがある限り」
「如何に上杉軍といえど」
「弓矢にしても鉄砲にしても撃ち合いならな」
 それに持ち込めばだった。
「数の多い我等が勝つ」
「ですな、鉄砲も弓矢もこちらの方が多いです」
「それもかなり」 
 特に鉄砲がだ、やはり織田軍の鉄砲の数は多い。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ