第二十話 錬金術その十四
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そのうえでだった、二人で裕香に言った。
「裕香ちゃん、悪いけれどな」
「今からね」
「そうなのね」
「ちょっとな」
薊はここで周りを見回した、そうして。
そのうえでだ、こう言った。
「ちょっと物陰に隠れてな」
「そこに戦いが終わるまでいてくれる?」
向日葵も裕香に言う。
「そうしてくれる?」
「安心しろ、そちらの娘に興味はない」
だがここでだった、不意に。
声がしてきた、そしてだった。
怪人達が三人の前に出て来た、その姿はというと。
黒い大きな節くれだった角を持つ怪人、それに平らな突き出た鼻と牙を持つ褐色の怪人だった。向日葵は彼等を見て言った。
「鹿と猪ね」
「だよな」
薊も向日葵のその言葉に応える。
「今度の怪人はこいつ等かよ」
「そうみたいね」
「あんた達が今度のあたし達の相手かよ」
「如何にも」
その通りだとだ、鹿の怪人が薊に答える。
「その通りだ」
「わかったよ、それでだけれどな」
「先程俺が言った言葉だな」
「裕香ちゃんには手を出さないんだな」
「俺達が用があるのは御前達だ」
薊達だというのだ。
「力を持っている相手だけだ」
「その言葉嘘じゃないんだな」
「嘘を吐いてどうなる」
今度は猪の怪人が言ってきた。見れば鹿の怪人はムースだ、日本の鹿ではない。
「俺達はそれ以外の目的を知らないのだから」
「裕香ちゃんには本当に興味がないんだな」
「全くな」
見れば裕香を見ようともしない、二人共だ。
「貴様達を倒した後は知らない」
「俺もだ」
鹿の怪人もというのだ。
「そちらの娘は何処かに行くなり消えるなりしろ」
「どうでもいいからな」
「そういうことか、じゃあ裕香ちゃんはな」
薊は怪人達の言葉を受けてだった、そのうえで。
裕香に顔を向けてだ、こう言った。
「じゃあ裕香ちゃんはな」
「うん、私は」
「そこにいてくれてもいいしな」
「隠れていてもいいわよ」
向日葵もこう裕香に言う。
「この怪人達嘘は言っていないみたいだし」
「それじゃあな」
「うん、じゃあここでね」
裕香はここでだった、強い声になってだった。
そうしてだ、こう言うのだった。
「私見守るから」
「あたし達をか」
「そうしてくれるの」
「うん、薊ちゃんが戦ってるのに私だけ隠れるとか」
そうしたことは、というのだ。裕香も。
「出来ないから」
「悪いな、そう言ってくれるんだな」
「うん、だからね」
それでだというのだ。
「私ここで見てるから」
「それじゃあな」
「見ていてね、私達の戦い」
二人は自分のすぐ横にいる裕香に微笑んで告げた、そしてだった。
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