暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
GGO
〜銃声と硝煙の輪舞〜
現実の弾丸
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重國は大きく頷く。
蓮と木綿季は顔を見合わせて眉根を寄せる。
それでも、それでもだ。
亡くなった茂村氏は残念な話ではあるが、まだよくある話。ただ単に、彼にとっての不幸な瞬間が訪れたのがMストに出演している最中だったというだけだ。
二人の思いが分かったからか、老人は「この話にはまだ続きがある」と言った。
「実は茂村君が――――Mストから《ゼクシード》が
回線切断
(
ディスコネクション
)
で消滅した時刻とほぼ同時刻。GGO世界の首都、《SBCグロッケン》という街のとある酒場で、一人のプレイヤーがおかしな行動をしたらしいんじゃ。ほれ、あの番組は酒場で中継されてるじゃろ」
「うん」
「その酒場の中で――――大勢のプレイヤー達がいる中でたわけた戯言を吐いて、画面に映っているゼクシードに銃撃したそうじゃ」
そこまで言い切った老人は、うっかりシミでも作ってしまったらクリーニング代だけで一生を費やす事になってしまいそうな紋袴の袖口から、テレビのリモコンみたいなものを取り出した。
ポチッ、と。
ボタンを押したその瞬間、機械が立ち上がる時のようなラグを一切感じさせずに、だだっ広い部屋一杯にザワザワという低い喧騒が響き渡った。
「シゲさん、これは?」
「その銃撃を見ていたプレイヤーの一人が偶然音声ログを取っていた。………まぁ、面白半分だったと思うんじゃがな」
木綿季と重國の会話の最中にも、音声データは流され続けている。
と、いきなりざわめきが消えた。
気味が悪くなるほどの一瞬の沈黙を、鋭い宣言が貫く。
『これが本当の力、本当の強さだ!愚か者どもよ、この名を恐怖とともに刻め!!』
それは、どこか非人間的な、金属質の響きを帯びた声だった。
『俺と、この銃の名は《死銃》………《デス・ガン》だ!』
それでいて、その叫びの向こうにいる生身のプレイヤーの存在を、まざまざと感じさせるような声だった。
それは蓮自身、かつてそこにいた身として感じる事。
生々しい、粘つくような殺人衝動。
その声にはそれが――――いや、それだけで構成されているようだった。
黙り込む二人に、老人は口を開く。
止めを刺すかのように。
「………このファイルには
日本標準時
(
JST
)
のカウンターも記録されていた。それによると、酒場での発砲が、十一月九日午後十一時三十分二秒。そして、茂村君が番組中に回線切断にて消滅したのは――――」
嘘だ。
そんな。
まさか。
顔を強張らせる少年と少女の前で、老人は受刑者に向かって死刑宣告を宣言するかのように
「同じ日の、十一時三十分十五秒」
言った。
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