第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
七月二十四日:『涓滴岩を穿つ』
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「ん、あァ……何か、大丈夫っぽいね。ハハ、流石は『制空権域』だな」
勿論、能力のお陰などではない。全ては、『あらゆる生命が大いなる輪廻の果てに、その御許へと回帰する』という“自存する源”が、その消化酵素の持ち主を『回帰』させたが為。
あの『ティンダロスの猟犬』の過去から繋がる因子が、消え果てた為だ。そうでなければ、今頃もう、この命などは尽き果てていよう。
「何を馬鹿なことを……そもそも、わたくしを庇ったりするからそんなことになるのですわ! わたくしは大能力の空間移動能力者白井黒子ですのよ、放っておいて貰えた方が動きようが……」
携帯で風紀委員と警備員、そして救急に連絡した後、ずびしっと人差し指を突き付けられて叱られる。
しかし、その理屈はおかしい。そう、おかしいのだ。恐慌に陥っていて能力が発動していなかったとか、そんな事ではなく。根本から、間違っている。
「なに言ってンだよ、黒子ちゃん。風紀委員の腕章に在るのは、『楯』だぜ?」
「そんなこと……分かっておりますの! わたくし達は、学園都市に住まう学生の楯……」
「いいや、分かってない。分かってねぇ、分かれよ。俺達はさ、『護る為に在る』んだから。先ずは仲間から護んねェと、そんな事も出来ねェ奴に────一体、誰を護れるってンだ?」
強い意志の籠る、蜂蜜色の瞳。後輩を指導すると言う、ついさっきも遣った行為。
母校でも、二年次からは遣れと先代主将に言われて。ほぼ毎日、行ってきた事だ。それを、黒子にも。
「……は……はいですの……申し訳ありませんですの」
正論を述べられて恥じ入るように頬を染め、視線を逸らした彼女。その左の上腕、そこに嵌められた腕章を引かれて。
それは、風紀委員として認められた者にしか装備を許されない物。『戦う』のではなく、『護る』事を誓った者である証。
それ以外は、例え、着用を許されていたとしても偽物だ。少なくとも、対馬嚆矢はそう考えている。
──つまり、己の事だ。この、偽善者が。あっちにふらふらこっちにふらふら、明部と暗部を行ったり来たり、どっち付かずの顔無蝙蝠め。
「────まぁそれは兎も角、この悪運がどうして女の子にモテる方面の才能に繋がらないのかと小一時間、俺の人生を脚本した神を問い詰めたいね、マジで」
「またそうやってチャラチャラと……はぁ、真面目にしていればそれなりですのに……」
自嘲と照れ隠しを併せた、立て板に水の如き軽口に呆れた顔をしながら、黒子はトレードマークのツインテールに。
よ
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