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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
35.水精の剛硬
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しますとわたくしは悪くないことを主張したいです」

 自分でもなにをいっているのか分からない。

「いや、それよりも……ニーナと夏音は……!?」

 強引に話題を変えようと大声を出す。

「ここだ。大儀であったな、彩斗、古城。それに雪菜と友妃もな」

 点検用のハシゴを使って、夏音が危なっかしくフェリーから降りてくる。その彼女の制服の胸元に、人形のような小さな影が乗っていた。

「礼を言う。おかげでようやく二百七十年の重荷から解放されたわ」

 そう言って胸を貼るニーナの身長は三十センチ足らず。妖精のようなサイズのオリエンタルな美貌の、見知らぬ女性だが、どことなく浅葱の面影がある。

「ニーナ……その格好は……」

 近くにいた古城が訊く。

「うむ。気にするな。残った“霊血”をかき集めてみたが、人型を保つにはこのサイズが限界であったわ。生活するのに特に不都合はないがな」

 そう言ってニーナは、胸に埋め込まれた深紅の宝石を撫でてみせた。

「叶瀬のところで世話するつもりなのか?」

「はい。いいですよね、彩斗?」

「あ、ああ。別に俺は構わねぇよ」

 ペット扱いするな、と古の錬金術師が、むくれたように腕を組む。

「ええっ!?」

 船体の裂け目から顔を出して、叫んでいたのは凪沙だった。髪はほどけており、少し大人びた印象ではあったが、いつもどおりの騒々少女だ。

「なにこれ!? 古城君!? どうして古城君がここにいるの!? って、彩斗君と友妃ちゃんも!? この船いったいどうなってるの!? もしかして氷山にぶつかっちゃった!? ていうか、雪菜ちゃんも友妃ちゃん、膝枕!」

 その声に友妃が慌てて立ち上がる。支えを失った彩斗の後頭部は打ち付けられて涙目になる。
 隣を見ると古城も同じように悶えている。

「わ、なにあれ、飛行船!? おっきい!」

 凪沙が空を見上げて言う。水平線に浮かんでいたのはアルディギアの騎士団の装甲飛行船だ。救助に来たえあしい。

「残念だったな、姫柊。せっかくの休暇がこんなことになって」

 後頭部を押さえたまま古城が、雪菜を気遣うように言う。
 はい、と雪菜は微笑み混じりにうなずく。

「でも、今回のことでよくわかりました」

 そう言って小さな拳を強く握りしめる。

「やっぱりわたしが少しでも目を離すと、先輩はすぐに危険なことに首を突っ込んで、知らない女の人と仲良くなるみたいですね」

「いや、待て。その理屈はおかしいだろ!?」

 なんでそうなる、と反論して首を振る。
 彩斗がその光景に爆笑していると、友妃がする。

「彩斗君も反省してよね」

 その声に彩斗の笑いが途絶える
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