暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
35.水精の剛硬
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疾く在れ(きやがれ)、十一番目の眷獣、“水精の白鋼(サダルメリク・アルバス)”──!」

 水妖の巨大な蛇身が、爆発的な激流となって加速した。鋭い鉤爪が抵抗できなくなった“賢者(ワイズマン)”の頭部を鷲掴みに握りつぶし、そのまま海中へと引き摺りこむ。
 第四真祖の十一番目の眷獣は水の眷獣。この莫大な海水すべてが彼女の肉体なのだ。

『カカカ……カ……カ……馬鹿な……馬鹿な……我が消える……完全な我の肉体が!」

 “賢者(ワイズマン)”の身体が徐々に溶けていく。それは破壊ではない。錬金術のように物質を変えているわけでもない。錬金術によって生み出された肉体を元の金属へと戻している。
 第四真祖の十一番目の眷獣、“水精の白鋼(サダルメリク・アルバス)”は再生と回復の眷獣だ。ありとあらゆる存在を癒して、本来あるべき姿に戻していく。それは“神意の暁(オリスブラッド)”の七番目の眷獣、“神光の狗(アポロ・ガン)”の再生とは違う。
 時の逆行という言葉がその光景にはふさわしい。
 やはり第四真祖の眷獣なのだ。すべてを癒し、無へと帰す破壊の力だ。

『カ……カカ……理解……理解した……』

 ついに髑髏だけになった“賢者(ワイズマン)”が最後に呟く。

『……その力……カ……と戦うための……』

 彼の最後の言葉は声になることなく、消滅した。




 戦闘を終えた彩斗は、フェリーの船体に背をあずけた。そんな彼に、刀を提げた友妃が近づいてくる。
 “賢者(ワイズマン)”との戦いで凍りついた海面は無事だったようだ。爆炎の眷獣のせいで海面が溶けたのではないかと少し心配だったのだ。

「彩斗君」

 友妃の呼びかけに彩斗は気怠そうに顔を上げる。疲労でもうなにもしたくない。

「逢崎か。怪我はなかったか?」

「うん。ボクは大丈夫だよ」

 その言葉を聞いて安心したのか彩斗の身体に力が抜けて倒れていく。
 友妃が慌てて隣に駆け寄ってくる。

「大丈夫、彩斗君!?」

「ああ、多分大丈夫だ。少し疲れただけだから」

 不器用に彩斗が微笑みかける。
 友妃は小さく溜息をついて、彩斗の頭を膝の上に抱きかかえた。それは膝枕の姿勢になる。

「あ、逢崎さん?」

 不穏な空気を感じてそこから逃げようとするが身体が疲労で動かない。
 友妃はにっこり微笑みかける。

「彩斗君。さっき夏音ちゃんの血、吸ってたよね」

「い、いや、それは……」

 彩斗の身体から汗が吹き出てくる。必死で目を逸らすが、顔をがっちりと固定して目を逸らさせないようにしてくる。

「それは、わたくしが気を失っている最中に行なった行動なので、これは睡眠中に行った行動と同じことでありまして、結論を申
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