暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
35.水精の剛硬
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簡単なことも理解(わか)らない“不完全”な存在だから、おまえは封印されたんだろうが──!」

『カカ……理解(わか)らぬ。理解(わか)る必要も認めぬ。我は唯一完全なる存在であるがゆえに』

 “賢者(ワイズマン)”が、激しく首を振る。

「それならこれからその“不完全”な俺たちに負けるテメェはそれ以下ってことだ!」

 彩斗の瞳が真紅に染まり、黄金の巨人を睨みつける。

「古城。あいつの動きは俺が止める。トドメは頼むぞ」

「ああ、頼んだぜ、相棒!」

 わずかに古城の前に立ち、右腕を黄金の巨人へと突き出した。
 その腕から噴き出した鮮血が、爆炎をまとって現出する。

「“神意の暁(オリスブラッド)”の血脈を継ぎし者、緒河彩斗が、ここに汝の枷を解く──!」

 爆炎を巻き上げて顕現したのは、金属質の硬化な毛並みをもつ新たな眷獣だ。紅の炎を纏う角を持つ闘牛だ。

「降臨しろ、十一番目の眷獣、“剛硬なる闘牛(ヘパイストス・バイソン)”──!」

 紅蓮の牛が爆炎を纏いながら“賢者(ワイズマン)”へと突進する。爆炎が大気を熱しながら、“賢者(ワイズマン)”の肉体を溶解していく。

『カ……カカ……なぜ逆らう、不完全な存在(モノ)よ』

 彩斗は黄金の巨人を無視して再び右腕を突き出した。

「──来い、“剛硬なる闘牛(ヘパイストス・バイソン)”!」

 紅蓮の牛が爆炎を纏いながら彩斗の身体めがけて激突し、爆発的な魔力の波動が右手の中へと凝縮していく。
 紅蓮に染まる鮮やかな石。その姿は、鉛を金へと変え、不老不死の永遠の命を与える錬金術師の産物──賢者の石のようだ。
 その石を無言のまま“賢者(ワイズマン)”へと掲げた。
 紅蓮の石が激しく輝く。

「あり得ぬ……なぜ不完全な存在(モノ)がその力を……!』

 黄金の巨人の形が徐々に変化していく。先ほどまで人間の形をしていた彼の両腕がただの金属の塊へと変化する。
 それは錬金術。金属の形を変化させる別の物質に変貌させる技だ。

「テメェらごときの技術を神意の暁(オレ)が使えねぇと思ってる時点でテメェは完全じゃねぇよ」

 不敵な笑みを浮かべながら相棒の名を叫ぶ。

「古城! 行けぇ!」

「おう!」

 古城が左腕を突き上げて、その腕から鮮血を噴き出し、爆発的な魔力を帯びた青白く発光した。

「“焔光の夜伯(カレイドブラッド)”の血脈を継ぎし者、暁古城が、汝の枷を解き放つ──!」

 閃光の中から出現したのは、水流のように透きとおった肉体を持つ新たな眷獣だった。美しい女性の上半身と、巨大な蛇の下半身。流れ落ちる髪も無数の蛇。
 青白き水の精霊(ウンディーネ)──水妖だ。


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