暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
35.水精の剛硬
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数の破片をかいくぐりながら、友妃と雪菜が、首を横に振る。

「たぶん……その答えを探し続けるのが、人間(ヒト)として生きるということです!」

「そうだね……ニーナさんも言ってた。人間(ヒト)であるかを決めるのは肉体のじゃないよ。今のあなたならわかるでしょ!」

「……っ!」

 絶え間ない天塚の攻撃が途絶えた。その瞬間を見逃すことなく、二つの祝詞が紡がれる。

「獅子の神子たる高神の剣巫が願い奉る──」

「獅子の御門たる高神の剣帝が崇め奉る──」

 “雪霞狼”と“夢幻龍”の刃が眩い輝きを放つ。

「そうか……僕は……」

 その光に包まれながら、どこか柔らかな表情で天塚が呟いた。
 彼は“賢者(ワイズマン)”のために働く必要などなかった。大勢の人々を傷つけ、犠牲にしてまで、人間の肉体を求める必要などなかったのだ。人間でありたいと願った瞬間から、彼は人間でいられるのだから、彼自身はそのことに気づいてさえいれば──

「破魔の曙光、雪霞の神狼、鋼の神威をもちて我に悪神百鬼を討たせ給え!」

「虚栄の魔刀、夢幻の真龍、遠矢(とうや)(やまい)を断ちて破滅せし未来を救い給え!」

 天塚の最後の攻撃をすり抜けて、雪菜と友妃の攻撃が彼の胸を貫いた。傷ついた宝石が、光に包まれて消滅する。かつて天塚だったものは、その瞬間、形を失ってる崩れ落ちた。




『カ……カカ……カカカカ……愚か……抵抗するか、不完全なる存在(モノ)たちよ』

 荷電粒子の輝きが、哄笑する彼の口から放たれる。
 それを彩斗の身体から溢れ出てきた爆炎が消滅させる。

「──黙れよ」

 “賢者(ワイズマン)”は自らの腕を巨大な刃へと変形させて、半壊したフェリーの船体へと叩きつける。それを受付止めたのは、緋色に輝く双角獣(バイコーン)だ。

「おまえには同情してやるよ。わけもわからないまま、完全な存在として創り出されて、その挙句に全身の血を抜かれて封印されちまったんだもんな。勘違いしたまま育つのも無理はねーよ。普通ならもっと早く気づくはずのことに二百七十年も気づかないままなんて」

 鮮血の霧を全身にまとわりつかせて、古城が荒々しく吐き捨てた。

『カ……カ……理解(わか)らぬ。不完全なる存在(モノ)の不完全な理屈を我は理解できぬ』

「簡単なことだろ。オメェは、完全でもなければ、“神”でもねぇっつうことだ」

 ハッ、と“賢者(ワイズマン)”が哀れむように笑う。

「いくら口からビーム吐こうが、不滅の肉体を持ってようが、その力でおまえがなにをした? 誰がおまえの存在を認めてくれたんだ? どうしてその“完全”な力を、ほかの誰かのために使おうとしなかった? そんな
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