暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
35.水精の剛硬
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っていた。

夏音(カノ)ちゃん……!?」

「か、叶瀬!? み、見てた……のか?」

 雪菜と古城が、上擦った声で夏音に訊いた。

「凄かった……です。雪菜ちゃんは大人な感じ、でした」

 雪菜が、ええっ、と表情を強張らせる。

「ち、違うの。さっきのはそういうことではなくて」

「大丈夫です。私も彩斗さんに──」

「えっ!?」

 夏音が恥じらうように彩斗を見る。
 彩斗には彼女の言っている意味がわからなかった。たしかに意識を失った彩斗がどうやって目を覚ますまで至ったのかがよくわからない。
 喉の奥には今もわずかに誰かの体液の余韻が残っている。
 それが意味するのは、夏音の血を吸ったということだろう。
 今になって酷い後悔が襲ってくる。

「いえ、私は……その……嬉しかったでした」

「え!? い、いや……そ、その……あ……」

 彩斗が激しく動揺する。

「──細かい話はあとにせよ! 時間がない。“賢者(ワイズマン)”が動き出すぞ」

 ニーナ・アデラートが叫ぶ声がした。肉体の一部を再生させたニーナだ。

「夏音、ニーナを任せていいか?」

 夏音はわずかに頬を赤らめながら微笑んでうなずいて、再生途中のニーナを膝に抱き上げた。

「……彩斗、古城……」

 ニーナが二人の吸血鬼の背中に不安げな声を出す。

「大丈夫だ。二百七十年続いたあんたの悪夢は、あの金ピカをぶっ壊して、ここで終わらせてやるよ。ここから先は、第四真祖(オレ)戦争(ケンカ)だ──!」

 そんな古城と彩斗の隣に寄り添うように、二人の影が歩み出た。
 銀色の槍を構えた雪菜と銀色の刀を構えた友妃だ。

「──いいえ、先輩。わたしたちの、です」

 彼女たちが睨みつける先には、天塚汞が立っていた。すべての目的を失った彼の瞳には、ただ彩斗たちと対する憎悪だけが浮かんでいる。
 空中に浮かぶ黄金の巨人が、カカ……と嘲笑う。
 それが戦いの始まりだ。




「……自分が利用されているだけだと知って、まだ戦うのですか?」

 雪菜が静かに彼に問いかける。
 凍った海の上で獅子王機関の二人の少女と天塚が睨み合う。
 天塚汞は金属生命体(モノ)は、虚ろな笑みを浮かべてみせた。

「悪いね。ほかになにをすればいいのか、わからなくてさ」

「天塚汞……」

 友妃が哀れむように呟いた。天塚の胸に埋めこまれた黒い宝石は、激しく損傷して、ほとんど原形を留めていない。

「恐いんだ……僕が、僕でなくなるのが……僕はいったい誰なんだ? なんのために生まれて、なにをすればいい!?」

 天塚が激しく吼えながら、自らの右腕を爆散させた。弾け飛んだ無
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