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その魂に祝福を
魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――1
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が手を止める事はなかった。魔力が戻れば、再び母親に向けて暴力を振るいだす。
(何で? 何でそんな酷い事するの?!)
 声をあげても、二人には届かない。そんな私の前で、ニミュエは憎しみを――殺意を募らせていく。その殺意のままに魔法を振るうごとに、徐々に右腕が黒く染まっていった。
 黒く染まり、包帯で覆われる様になったその腕は――皮肉な事に、母親のその腕によく似ていた。
 しかし。それでもなお、母親には遠く及ばない。彼女の母親はそれほどに強大な魔力を秘めていた。それこそ、光に匹敵するのではないかと思うほどに。
 だからだろうか。彼女はついに家を飛び出した。
(待って! そんなのダメだよ!)
 慌てて後を追いかける。追いつけるとは思えなかった。だけど、そうせずにはいられなかった。だって、こんなのは哀しすぎる。
「待って!」
 初めて声が出た。そのまま、彼女――ニミュエの右腕を掴む。そこで、初めて彼女は私を見た。その頃には、私もそれが夢だなんて事は忘れていた。
「何で、何であんな酷い事するの!? どうして出ていくの!?」
 あんなに。あんなにも大切に思われているのに!――それは言葉にならなかった。言葉にしてしまえば、もっと酷い言葉になるのは分かっていたから。
 あんなにも愛してもらって、何が気に入らないの?――彼女が羨ましくて妬ましい。そんな自分を、はっきりと理解していた。だが、
「何でだと?」
 ニミュエが睨みつけてくる。あるいは憐れんだのかもしれない。
「私はアイツが生み出した。勝手な願いで……こんな、普通じゃない身体でだ!」
 普通ではない身体。それが何を意味するのか私には分からなかった。なのに――
「その憎しみは、オマエにも――オマエの方がよく分かっているだろう?」
 何で、彼女はそんな事を言うのだろう。彼女は、一体何を言いたいのだろう。言葉を失った私に、ニミュエははっきりと憐れみの視線を向けた。
「もう、いい加減に気付いているはずだ。いつまで目をそむけ続ける?」
 その声は――場違いにも、酷く優しかった。
(ダメ。ダメ。言わないで!)
 それを言われたら、私が――フェイト・テスタロッサが壊れてしまう。理由も分らないまま、首を左右に振る。懇願するように。それが通じたのかどうなのか。
「まぁ、いい。オマエが私と同じように狂ってしまう前に、私がオマエを解放してやる」
 それは、確かに優しさだったのだろう。その時、ニミュエは酷く優しい目をしていた。
「憎んでもらって構わない。どうせ私――私達にはそんなやり方しかできないからな」
 告げると、ニミュエは私に背中を向けた。夢が終わる。直感的にそう思った。
「待って!」
 夢の終わり。滲んだ世界の中でその背中に叫ぶ。
 もう分かっていた。理解していた。
「お願い
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