魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――1
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事もないさ」
その言葉に首を振る。優しい嘘なら聞きたくなかった。
「嘘じゃないって。まずは妹を紹介しよう。……まぁ、今は敵同士だからあまり良い印象はないかもしれないが、根は素直でいい子だ。きっと仲良くなれる。それに、あいつの友達もいい子が揃ってる。親友二人は特にな。きっとあちこち連れまわされて、寂しいなんて言ってられないぞ? あとは……そうだな。翠屋って店に行ってみるといい。ウチがやってる店だが、俺が作るより遥かに美味い物を食べさせてくれる」
髪を梳きながら、言い聞かせるように光が言う。それはとても楽しくて幸せな未来だった。でも、でもね、光……。
(その中に、光はいるの?)
光を優しい魔法使いだなんて言ったのは一体誰だろう。こんなにも――こんなにも残酷なのに。
「必ず、そんな未来を用意する。だから、大丈夫だ」
……残酷なくらいに、優しいのに。だから、どうかそんな事は言わないで。
最悪でも、血塗れた魔法使いが一人この世から消えるだけだ、なんて。
(それじゃダメだよ。あの子が悲しむよ。それに――)
きっと、私も耐えられない。だから、消えるだけだなんて、そんな事を言わないで。
5
夢を見た。夢を見ていた。とても哀しい夢を。
「何で私を生んだんだ!?」
金髪の、綺麗な少女が叫ぶ。その子はそのまま、母親らしき女性へと掴みかかった。そのまま、力任せに殴り蹴り始める。息が切れるまで。あまりの光景に、思わず言葉を失う。そんな私の前で、彼女はさらに魔力を収束し始める。
(ダメ!)
声にならない悲鳴。それは魔法――それも、光と同じ魔法だった。彼の魔法には非殺設定がない。それを思い出し、反射的にその女性を守ろうとしたが。
「クソッ!」
その女性は、少女を遥かに上回る魔導師だった。少女の魔法をあっさりと防いで見せた。何度も何度も。放たれた魔法の全てを。彼女の魔法が未熟な訳ではない。むしろ、かなりの実力だろう。光の魔法には詳しくない私にもそれが分かる程度には。だが、それでも。どれほど楽観視したところで、その少女に勝ち目などなかった。母親らしきその魔女との実力差はそれほどに圧倒的だった。
「さぁ、ニミュエ。ご飯にしましょう。ね?」
魔力が尽きるまで暴れた少女に、母親は優しく微笑みかけた。それは、仮初の笑みなどではない。本当に、彼女は娘を愛している。言葉の一つ一つ。表情の一つ一つ。仕草の一つ一つ。全てからそれが伝わってくる。だからこそ、歪な親子だった。
少女の母親への憎しみは、反抗期などという生易しいものではない。いつ殺してもおかしくない。いや、今すぐにでも殺したがっているのは、私の目にも明らかだった。
それができないのは、単純に母親がとても強力な魔導師だったからだ。それでも、少女――ニミュエと呼ばれた彼女
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