魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――1
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アルフの口調が険しくなるのが分かった。
「一三日――いや、もう一日過ぎたからあと一二日か」
ああ……。光達は、一体何の話をしているのだろう。あとたったそれだけで光がいなくなってしまうなんて、そんな事が……。
「……アルフ。念のためお前に頼んでおきたい事がある」
真剣な声で、光が言った。
「もしも俺が堕ちたら、相棒……偽典リブロムを読みとけ」
「偽典リブロム? それに相棒って……」
「俺が扱う魔法の全てがそこに記されている。……生きた魔術書だよ。口と人相は悪いが、別にそう悪い奴じゃあない」
光は苦笑したらしい。それを聞いて思い出した。あの子――光の妹が持っていたあの奇妙な本の事に違いない。
「それを読みとけばいいのかい?」
それを読みとけば、光を救う事が出来る。……私はそう思った。きっと、アルフもそう思ったはずだ。けれど。
「ああ。その中に、不老不死の怪物の殺し方も記されている」
殺し方。光はそう言った。それは、つまり……
「アタシにアンタを殺せって言うのかい?! そんな事――」
「フェイトにやらせる気か?」
「ッ! それは……」
「お前がやらなければ、その怪物はあの子を殺すぞ」
酷く――場違いなくらいに落ち着いた光の声に、悪夢が現実へと切り替わる。十二日後、この二人が殺し合う。アルフと、光が殺し合って――光がいなくなる。ひょっとしたらアルフも。
地面が揺れた。立っていられない。ぐらりと身体が揺れた。支えきれなくなって、目の前の扉にすがりつく。半開きの扉はそのまま大きく開け放たれた。
「フェイト……」
光とアルフの、酷く驚いた声が重なった。この二人が――この二人までいなくなってしまうかもしれない。視界が滲んで、二人の顔がよく見えなくなる。
「嫌だよ……」
滲む様に、二人がいなくなってしまうのではないか。その恐怖に怯え、近づこうとする。だけど、震える膝では立ち上がれなかった。それでも、手で這いずって近づく。
「嫌だよ。何で、何でみんないなくなっちゃうの!?」
光の右腕に縋りつく。声をあげて泣いたのはいつ以来だろうか。
「私、良い子にするよ? 魔法の勉強も頑張るよ? ジュエルシードだって一人で集められるよ? だから、もういなくならないでよ……ッ!」
「フェイト……」
光が頭を撫でて、アルフが肩を抱いてくれる。それでも――だからこそ、涙が止まらない。もう自分でも何を言っているのか分からなくなった。
「何で?! どうしてみんないなくなるの?! 嫌だよ。寂しいよ。誰か助けてよ! どうして……ッ!」
息が止まるくらいに、強く抱きしめられた。
「大丈夫だ」
静かな声。優しい声。殺戮衝動に囚われているなんて嘘のような声で、光が言う。
「大丈夫だよ、フェイト。怖い事なんて、何もない。寂しい
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