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その魂に祝福を
魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――1
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い。けれど、不思議と大丈夫な気がしてきた。無条件に信じてしまえそうな、不思議な感覚。昔、それと同じような感情を抱いた事がある。例えば母さんであったり、例えばリニスだったり――…。
「色々あったからな。少し疲れているんだろう。少し眠るといい」
 彼は本当に魔法使いだった。魔導師というものがどういうものかまだ知らなかった頃。絵本で読んだ魔法使い。どんな問題も、杖の一振りで解決してくれる優しい魔法使い。その一言で、意識が軽くなる。ふわふわと浮かび上がって、夢の世界へと逃げ込んでいく。
「おやすみ。きっと大丈夫だから」
 ああ……。知っているのに。分かっているのに。
 杖の一振りで何でも解決できる。そんな都合のいい『魔法使い』なんて、どこにもいない事くらい。




 光がフェイトを寝かしつけてからの事だ。
「こんなもんでいいのかい?」
「ああ、上等だ。即席としては申し分ない」
 アタシは光の指示のもと、使っていない小部屋の四方に何だかよく分からないガラクタを配置し、それを繋ぐように奇妙な文様で魔法陣らしきものを描いていた。その染料は……まぁ、例によってとでも言うべきか、光の血だった。相変わらずグロい魔法を使おうとしているらしい。
「物欲に乏しいあの子に助けられたな」
 魔法陣に魔力を注ぎながら、光が苦笑する。今この部屋には、光が用意したがらくた――本人いわく供物とやら――しか置かれていない。備え付けてあった家具は、近くの物置に放り込んである。そんな事が出来るのは、ひとえに物がないからだ。その気になれば、もっと色々と買い揃えられるだけの予算はあるのだが――フェイトが欲しがらない以上増える訳もない。と、それはさておき。
「これは?」
 展開された魔法は――アタシの感覚からすれば、結界のようだった。実際、通常空間と隔離されているのは間違いあるまい。だが、この空間はただの結界ではない。妙な殺気が漂っている。
「訓練用……供物の試し撃ち用の異境だ。元々は偽典リブロムに付加させた『記述』の一つだが、それに少し細工して異境として再現した」
「訓練用って……。何でそんなもん今さら必要なのさ?」
 光は、クロノとか言う執務官を特に苦も無く一蹴して見せた。というより、彼の妹が止めに入らなければあのまま殺していただろう。まさかあれが本気だったとも思えないし、今さら秘密の特訓が必要だと言う事もあるまい。
「色々と事情があってな」
 だからその事情ってのは何なのさ――問いかける前に、総毛立った。温泉宿で感じたあの『恐怖』に本能が悲鳴を上げた。
「早く立ち去れ。でないと……」
 この結界――いや、異境とやらの効果なのか、巨大なネズミのような化物が、次から次へとわき出てくる。それを見据え、光は……光の姿をした怪物は嗤っていた。
「今夜の夢見が
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