第3話 検証
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の脳裏に紫の髪を持つ娘の姿が映る。
紫色の髪と瞳を持つ娘。
11歳にして現代の科学力を上回る機械を作り上げ、そして木刀という武器を持った柳韻ですら、素手の娘に一撃どころかかすらせることもなく、一方的に負かせた天災。
柳韻はそんな娘が恐ろしかった。
一体どうすれば、あんな化け物が生まれてしまうのか。
そして、目の前の息子からもその雰囲気が見え隠れしていた。
気づかぬうちに身体中から汗が噴き出し、身体の熱を奪う。
落ち着け、と自らにいって聞かせる。
確かに息子は周りの子どもとくらべおかしなところが多い。
声は出さないし、出さないから泣いたこともない。
決まった時間に寝て、決まった時間に起きる。
食事を取り終わると書庫に行き、そこでひたすらそこに眠る書物を読む。
読まない日は布団の上に座り目を閉じているだけ。
これがおかしくないという奴がいるはずがない、と断言できるほどだ。
だが、昨日。
息子は声を発したのだ。
言葉を発したのだ。
息子の姉である箒や束と一緒に遊んだのだ。
ならば、いままでとは違うと思った。
今日もいつもと違い、声を発し、幼稚園にいくまで箒と一緒に何かをしていた。
普通の子どもになったのだ。
息子は。
結弦は。
ならばこそ、いままでしてこなかった愛情を注ごうと決めた。
3歳児には早すぎるかもしれないが剣術を教えようと思った。
そうだ、結弦は才能があるだけのただの子どもだ。
あの子とは違う。
落ち着きを取り戻した柳韻は息を吐き、結弦に木刀向かって構える。
そして柳韻は見た。
左目に赤い鳥のような紋様が浮かび上がるのを。
なんだ、あれは……?
結弦の目に浮かぶ赤い鳥のような紋様。
それは先ほどまではなかったもの。
つまりなんだ。
結弦は。
結弦もあの子と、束と同じなのか。
いや、束にあんなことはできない。
それなら、目の前の息子は……
そう思った時、身体に何かが走る。
結弦が一歩踏みだしたのだ。
それに思わず、一歩引いてしまう。
なにを引いているのだ、相手はまだ3歳の子どもだぞ。
自身にそう言って結弦に目を向ければもう目の前にいて。
次の瞬間。
ドンッ
と、どこかとおくからの音を耳にし柳韻の視界は反転し暗くなっていった。
「実にあっけないものだな。これではこの眼の検証はできなかった」
木刀を一太刀柳韻に振るい、感じたのはそういったものだった。
結弦は眼と身体の性能を確かめるためにこの試合を行ったというのにものの一太刀で伸びてしまった柳韻に呆れてし
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