第1章 双子の兄妹
1-1 無防備
無防備
[4/7]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
りだし。早く着替えたいんだ。マユミちゃんさえ良かったら。ね?」
<i2225|26967>
アキラの笑顔はひどく優しかった。それが今、自分にだけ向けられていると思うと、図らずもマユミの鼓動は速くなっていった。
アキラの家は真新しく、白い壁の清潔感溢れる一戸建てだった。
玄関を入ると、白いポメラニアンが息を切らして転がるように全速力で駆け寄ってきた。
「よしよし、クリス、寂しかったか?」
アキラが抱き上げると、その毛むくじゃらの小動物はちぎれんばかりに尾を振って狂喜した。
アキラの部屋に通されたマユミは、小さな座卓の前に座らされた。
「ごめん、俺、ちょっとシャワー浴びてくる。速攻で」
アキラはマユミの返事も訊かず、ドアを閉めて階段をどたどたと降りて行った。
マユミは部屋を見回した。大きな窓から夏の眩しい光が部屋中に降り注いでいる。決して広いとは言えない部屋には少し不釣り合いな大きなエアコンから冷たい風が吹き出してきて、すぐに外界とは違う快適さになった。
「片付いてる……」マユミは独り言を言った。
机の上の教科書や参考書もきちんと立ててあり、ベッドにはブルーのボーダー柄のカバーが掛けられている。壁にはアキラが試合で走り回っている写真が何枚も額に入れられ飾られていた。そしてその横に、ハンガーに掛けられた部活の試合用ユニフォーム。
本当に速攻でアキラが戻ってきた。ドアを開けた彼の手のトレイにはオレンジ色のジュースの入ったグラスが二つ載せられていた。
「ごめんね、ここに来てすぐ、持ってくれば良かったね」
アキラはそれをマユミの前のテーブルに置いて頭を掻いた。
Tシャツに短パン姿のアキラは、マユミの横にあぐらを掻き、彼女の顔を見て微笑んだ。「飲んで」
マユミは少し慌てたようにグラスに手を伸ばした。
「先輩って、きれい好きなんですね」マユミが恐る恐る言った。
「え?」
「だって、男のコの部屋なのに、とってもきれいに片付いてるし」
「ママがうるさいんだ」アキラは困ったように首をかしげた。「でも、俺自身も散らかってると落ち着かない」
「(『ママ』……。先輩ってお母さんの事ママって呼んでるんだ……)」
マユミはストローを咥えた。
「ねえ、マユミちゃん」
「はい」
「今さらだけどさ、俺の事、どう思ってる?」
「えっ?」
マユミは意表を突かれて思わず顔を上げた。
「俺って、君の彼氏、だよね?」
「……」
「でなきゃ、こんなとこまで来ないよね」アキラが念を押すように、低い声で言った。
マユミの耳に自身の心臓の音が低く、速く聞こえ始めた。
「あ、あの、あたし……」
アキラの手が、マユミの肩に置かれた。
「え? あ、あの……」
アキラの顔が目
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ