願いの刃は殻を割く
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、俺達を使ってくださいや。乱世に……あー、壊されない平穏な世を、作ってください」
頭を下げて預けられたのは想いのカタチ。続くはずだった言葉はまだ表に出せない。
華琳の言を忠実に守っている事に、桂花は少しの感嘆を覚えた。
「さ、もうちょいとだけ待ってやってください。出て来ないってぇ事は、鳳統様が妻の想いを聞いてくれてるんでしょう」
「何を話してるのかしら……」
「……大事な事、ですよ。鳳統様を少しでも癒せるような、きっとそんな感じです」
「そう……必要なら後で雛里が話してくれそうね。途中で立ち入るのもなんだし、雛里が出てくるまで待たせて貰ってもいい?」
男嫌いな自分がそんな発言を出来た事に驚く桂花であったが、不思議と警戒心も猜疑心も、苦手意識も感じない。
必死な想いを聞いた後で男だからと蔑む自分を想像すれば、下らない、と一笑出来そうであった。
「構いません。こんなむさい男と一緒に待たせて申し訳ないくらいです」
「……気にしなくていいわよ、別に。ただ待ってるのもなんだから、別の話も聞かせて貰える? 兵士から見た劉備軍の他の部隊の話、とか」
もう少しこれからは視野を広げてみよう、と心に決めて、彼女はいつも通りに、主の為になる事を積み上げて行く。
†
震える心、溢れる想い……雛里は涙と共にそれらを抑え付けてその部屋に踏み入っていた。
「あのバカ……鳳統様を哀しませてどうすんだい」
小声で毒づく部隊長の妻は、眉を寄せて雛里を見つめる。
その視線を受けて、雛里は目を瞑り、数瞬の後にはいつも通りに戻っていた。
「その……お話をしたい、とお聞きしたのですが……」
妻はさらにぎゅっと眉を寄せた。されども何も言わずに視線を外す。
立ったままで居ては気遣いをさせてしまう、と寝台にとてとてと歩み寄った雛里は、横に据えてあった椅子に行儀よく座った。
「寝たままで申し訳ありません」
「いえ、お身体をお大事にしてください」
微笑んで頷くと三角帽子が揺れた。忘れていた、とばかりに慌てて帽子を外して、揃えた両ひざの上に置く。
小動物のような仕草に、妻は穏やかな表情で吐息を漏らした。
「ありがとうございます」
礼を言った後、チラ、と自身の子に目を向けてから、彼女は強い光の宿る両の翡翠を見つめた。
「鳳統様は徐晃様の事をお慕いしている、とあのバカから聞いていますが、本心を話してもよろしいですか?」
身分の差、というモノはこの時代どこでもついて回る。平民が軽々しく本心で零した一言が無礼な発言と取られるやもしれない時代である。
例え少女の見た目でも雛里は軍師であり為政者。気軽に話せる相手では無い。その点で言えば、民の隙
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