願いの刃は殻を割く
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ていたか、部隊長は知っている。他の兵士がどんな目で自分達を見ているかも知っている。
だから問うてみた。想いを聞いた彼女がどう思っているかを。
「……もう、思わない。怖くも無い。あんた達は狂ってなんかいない。でも……っ」
グッと言葉に詰まった。その先を言ってもいいモノかと悩んだ。
部隊長は何が言いたいのか分かったのか微笑み、小さく吐息を零した。
「そうです。ホントの意味で狂っちまってるのは御大将ただ一人。真っ直ぐブレずに、たった一人だけでイカレちまってます。切り捨てて、切り捨てて、敵に憎しみを持てねぇほどぶっ壊れて、それでも割れねぇ空っぽの器に他人の願いを詰め込む事しか出来やしねぇんです。
そんなあの人にこれ以上ぶっ壊れて欲しくなくて、生き抜く為に戦いながらも、俺達は幸せだったから哀しまないでくれって伝える為に……最期は笑って死ねる。御大将が俺達のそういう想いを分かった上で、想いの華を繋いでくれる優しい人だってのも知ってるから……俺達は御大将に心から忠誠を誓ってんです。
それが徐晃隊。俺達黒麒麟の身体。御大将が居なくても始まりは俺達とみぃんな“同じ”だから、新兵の末端に至るまで、黒に染まっちまって行くんでさ」
またもや沈黙。
雛里の心を少しでも軽くしたくて聞いた話で、こんなにも心が乱されるとは、桂花も予想していなかった。
戦場で生きる様は冷たく先を見据えた効率の道、平穏な日常で生きる様は暖かく絆繋ぐ道……主と似ているようで違う、黒麒麟の歩む道。
外に乱世を、内に治世を……それが桂花の主、覇王曹孟徳の生きる道。先導はせども隔絶された王としての姿を示し、近くにある事は出来ない。
道以外の共通項は……どちらも一人である事。
絆繋ぎながらも、黒麒麟は覇王と同じく孤独だと感じた。
――乱世の為には華琳様と同じになって、治世の為には劉備と同じになる……みたいな感じ。でも……それも違う。やっぱり変、訳が分からないわ。黒き大徳、うん、矛盾だらけだからそういう事にしておきましょう。黒麒麟について考えるのなんか今は止め。少なくとも徐晃隊が向ける想いは分かったんだから。
納得した表情になった桂花の前で、お茶を飲んで口を潤した部隊長。彼への想いを話して楽になったというように、表情は穏やかだった。
「話してくれてありがと」
「いいえ、俺も幾分すっきりしたんで。ありがとうございました」
「それと……わ、悪かったわね。前の戦では。雛里みたいに最後まで一緒に戦えなくて」
「俺達は俺達の意思で戦ってます。荀ケ様のような軍師様方が気に病むことじゃありません。周りからどう見られても気にもなりやせん。でも、そうっすね……俺達は覇王様を信じています。御大将を信じたように、曹操様を信じています。だから何も心配せず
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