願いの刃は殻を割く
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と思考を回せばその命令がどのような心理的枷を外させるか思い至る。
近しい者達を説き伏せられたなら安心と使命感と責任を与える事が出来て心の強さを持てるは予想に容易く、無理矢理自分の意思を押し通して来たなら自身でやり通す為の心力と為せる。
さらには、兵士の家族という民にさえ、戦に対する危機感を与えて身近なモノの喪失という絶望への予防線を張り、敵対勢力への反抗心を育て、より早い乱世の終結を望ませる事が出来る。仲のいい民同士の間でそういった意識も広まるだろう。
兵士の死後に残された家族へのケアも行い易く、民心掌握に対しても先手を打てる。
兵士達には同じ条件を乗り越えてきた同志達であると認識させ負い目を無くし、笑い話として自分がどうだったかを彼らが話せば絆も深まると言うモノ。
そして副長という黒麒麟の狂信者の目に適うかどうか見させながらも、徐晃隊色では無いモノを事前に周りに教えて認識を強める。
心理的な効果が計り知れない。兵士になるなら皆しているだろうと誰も触れないような命令が、目に見えない力を国に対しても、部隊に対しても、兵一人一人に対しても増幅させるのだ。
ゾクリ、と肌が粟立った。その効果を理解して行ったわけでは無く、思いついたまま素でやっているというのだから、恐ろしいという他なかった。
ただ、これが徐晃隊の兵全てを狂信させた理由のほんの第一歩目に過ぎない、と桂花は気付く。
「そ、そう。それは分かったわ。じゃあ話を続けて頂戴」
促されて頷いた部隊長は、嬉しそうに彼の話の続きを紡いでいく。
「御大将はバカでしてね。帰ってきたら帰ってきたで新兵達に怒るんでさ。『大切なモノ達を自分で守らないバカ野郎共が、そんなに俺達のような人を殺してメシを食うクズになりたいかっ』って、兵士の脚が震えるくらい、本気で」
「はぁ!? 何よそれ!?」
「徐晃隊に入りたいって奴等は黄巾で鳳統様方や御大将の名前が売れてからわんさか湧いてきまして、連合直後なんかその時の三倍以上でした。だから中途半端な想いを持つ奴等の選別の為と……最終忠告です。迷った奴等は区画警備隊で満足して貰うってぇ算段です。大切な人を守りたいから徐晃隊脱退、もしくは徐晃隊になれなかった奴等が警備隊に入るってのは、結構多いんでさ。勿論、警備隊から徐晃隊に上がってくる奴等も多かったですが。
で、御大将と副長、隊長格とか第一の奴等が見極めて、残った兵士達に『お前らは俺と一緒だ。俺達と一緒だ。一人でも多く殺して、一人でも多くを救い、守り続けろ。最後の最後に俺が想いを繋いでやる』って残して副長以下隊長達に規則遵守の説明やら何やらを任せるんです。そうなれば新兵達は疑問を持って誰かが聞いてくる。聞かれて答えるのが俺達部隊長と、隊員の仕事です。新兵達にとっちゃ御大将が自分達と同じだっ
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