魔法少女じゃなきゃダメだという
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まだ引きずっているのか、傍から見れば微笑ましいその光景すらも負け犬特有の僻みフィルターがかかった珠希の目には毒だった。そもそも、それは極論でありジョークだということを冷静に考えられない時点で既に負け犬なのかもしれない。
それに、きっと魔法少女さんサイドは先程の珠希の愚痴はまったくの言いがかりだと主張するだろう。ロリー○の定義にある1○歳から3歳も年上なキ○アムーンラ○トさんをはじめ、St○編の『管理○の白い魔王』らの例外がある以上は。
「おや珠希ちゃん。今日は寄っていかないのかい?」
「え? あ、いえ……、寄っていきます」
いつの間に自宅近くの商店街に来ていたのか、齢17にして、齢17にして――大事なことなので2回言っておく――常連と言っても過言ではない八百屋のお母さん――おばちゃん扱いしても怒られはしないが、ここは顔を立てておくべきだろう――に声をかけられ、珠希は色とりどりの野菜が並ぶ店先に足を向けた。
「――にしてもさぁ、珠希ちゃん。アンタほんとに働き者だねえ」
会計を済ませ、お釣りを珠希に渡しながら八百屋のお母さん――別におばちゃ以下略――がしみじみと呟く。
とは言うものの、珠希はお嬢様とは程遠いドがつくくらい庶民の中の庶民。庶民オブ庶民である。共働き家庭のうえ、歳の離れた兄は少し離れた街で一人暮らし中。3歳下の妹はただ今高校受験を控えてB級ゾンビ映画のゾンビのごとくあーうーと喘いでいる。両親の頑張りのおかげで家計は決して苦しくはないのだが、お金の大切さは年齢一桁の頃から痛いほどその――出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる――華奢な体躯で味わっているせいか、今や大安売りやらお買い得の文字列に勝手に身体が反応するよう訓練されてしまっていた。
もちろん倹約・節約大好き主婦としては素敵なスキルだろうが、悲しや今の珠希の職業は主婦ではなく女子高生である。恋愛経験値が0という現実が余計に哀愁を誘う。
「ウチのバカ息子なんか今でも『俺はギターで食ってくんだ』とか言って、学校もロクに行ってないんだよ」
「あ、それは……、まあ……」
「それにさ、聞いてよちょっと。何でも最近パソコンにつけるカメラみたいなの買ってきてさ、ネットに自分がギター弾いてる姿のっけ始めたらしいのよ」
「そ、そう、ですか……」
どこか他人事と思えない八百屋のお母さんの台詞に、返す言葉も見つからない珠希はひたすら曖昧に逃げ回るしかなかった。どうしてこうもこの世代の女性――特に既婚者子持ちの奥方サマ――は何気ない世間話から他人様の家庭事情に踏み込ませるのが上手いんだろう。
「しかも何やらカッコつけて身体揺すったりとか、カメラ映
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