第六話 怯え
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夫人の周りの人間だとしたら?」
「……」
「さっき俺が言っただろう、寵姫と元寵姫の争い、碌な事にはならん。まともな奴なら関わり合いになるのを避けるってな」
今度はラインハルト様が呆然としている。そして“そういう事か”と呟いた。私もようやく腑に落ちた。二人の少将は顔を見合わせている。
「こいつを書いた奴は怯えているのさ。巻き込まれたらとんでもない事になるってな。しかし自分にはベーネミュンデ侯爵夫人を止める事は出来ない。ならば如何する?」
「ラインハルト様に知らせて侯爵夫人を止めさせようとした、そういう事ですね」
私が答えるとリュッケルト大将が”その通りだ”と頷いた。
「味方が頼りにならねえなら敵を利用するしかねえ。道理でそっけねえ手紙の筈だよ。余り詳しく情報を入れれば身元がばれちまうからな。本人は誰にも気付かれる事無く事を収めたい、そう考えて手紙を書いたんだろう」
「虫のいい話だ」
ラインハルト様が顔を顰めて吐き捨てた。なるほど、だからG夫人、B夫人か。特定はせず分かる人間だけに分かるように記述した。
「しかし、もしそうだとするとグリューネワルト伯爵夫人はかなり危険な立場にある事になります」
ミッターマイヤー少将が危険を指摘すると皆が頷いた。
「送り主を特定出来ないかな、奴から話を聞き出せればこっちがかなり有利になるんだが」
リュッケルト大将の言葉に皆が唸り声を上げた。
「ただの侍女じゃねえ。もしかすると実行犯に予定されているのかもしれん、それで怯えている。……となると宮中に出入りが出来る人間、伯爵夫人に近付いても不振には思われない人間だがそんな奴が侯爵夫人の周辺に居るのかな……」
リュッケルト大将が首を捻った。
「聞いた事が有ります。グレーザーという宮廷医が頻繁に侯爵夫人の屋敷に出入りしているとか」
ロイエンタール少将の言葉に皆が顔を見合わせた。
「ラインハルト様、宮廷医ならば……」
「姉上に近付くのも難しくは無いな、キルヒアイス」
難しくは無い、毒を盛るのも可能だろう。
「ロイエンタール少将、ミッターマイヤー少将、そいつをここに連れてきてはもらえんかな。ちょっと締め上げてみよう、そいつが送り主じゃなくても何かは分かるだろう」
リュッケルト大将の言葉に二人の少将が頷いた。
■ 帝国暦486年 7月16日 オーディン ジークフリード・キルヒアイス
目の前で椅子に座っている宮廷医グレーザーは目に怯えを見せていた。ラインハルト様、リュッケルト大将、ロイエンタール少将、ミッターマイヤー少将、そして私と五人の軍人に囲まれているのだ。疾しい事が無くても怯えるだろう。リュッケルト大将が“じゃあ始めるか”と言うと益々怯えた表情を見せた。拷問でもされると思ったのかもしれない。
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