暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
34.洋上の慮外
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海王の聖馬《ポセイドン・ユニコール》”!」

 実体化した黄金の角を持つ一角獣(ユニコーン)が咆吼する。
 フェリーの船体が大きく揺れる。陽光が巨大な浮遊物によって遮断される。
 それは海水の塊。その大きさは優に絃神島の一基ほどの大きさとなっている。
 海中に潜んでいた巨大な“賢者の霊血(ワイズマンズ・ブラッド)”の塊が空中に浮かぶ海水の中に閉じ込められる。

「なんとかセーフみてぇだな」

 いくら相手が人工の“神”だとしてもこちらも“神”の呪いを受けし、神々の化身だ。不安定とはいえ、その力はそれらに匹敵できる。
 今のうちに“賢者(ワイズマン)”を倒せばいいことだ。

「いいねえ、さすが宴を勝ち抜いただけのことはある」

 そんな中、この場に似つかわしくない笑いを隠すような声がした。
 声の方角へと視線を向ける。
 そこにいたのは、金色の髪が襟足まで伸びている少年。学生の夏服のようなカッターシャツに黒い長ズボンを着ている。見た目は彩斗たちとあまり変わらない。どこかチャラい不良のようなイメージに見える。

「おまえは……」

 言葉に詰まる。
 この場にこの少年はいつからいたのだろうか。この少年から溢れ出るこのオーラはなんなのだろうか。そんな疑問が彩斗の頭を巡る。
 だが、それよりも彩斗はこの少年を知っているはずだ。確実にどこかで会っているはずだ。
 この感覚は、友妃のときと一緒の感覚……

「つれねえな。それならこれで思い出してくれるか」

 金髪の少年が不敵な笑みを浮かべる。
 それと同時に獣の咆吼が大気を震わせる。
 その咆吼にその場にいた全員が身を震わせた。悪意に満ちた獣の咆哮。何度も彩斗の前に現れ、窮地に陥れた漆黒の獣の眷獣が再びその姿を虚空から現したのだ。

「あいつは……」

 一角獣(ユニコーン)が攻撃体制に入る前に漆黒の獣は、その身体に鋭い爪を抉りこんだ。
 絶叫するような馬の声が大気を劈き、黄金の一角獣(ユニコーン)が消滅する。
 それとともに海水の塊が支えを失い重力に引かれて再び、落下してくる。
 船体が激しく揺れる。ギリギリで転覆することだけは免れた。
 先ほどまで閉じ込められていた“賢者の霊血(ワイズマンズ・ブラッド)”の塊が再び、解き放たれてしまった。

「まだ思い出してくれないみたいだな。それならこれでどうだ?」

 金髪の少年が愉しそうに笑みを浮かべて、胸ポケットからなにかを取り出した。銀色の輝きを放つ十五センチほどの長さ。先端に刃が付いており、手術に使うメスのような印象だ。

「んぐっ……!」

 その瞬間、彩斗の頭に激痛が走る。
 記憶の扉が強制的に開かれていく。
 今まで封印されていた記憶が徐々に徐々に明確な形をな
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