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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
34.洋上の慮外
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もうやめておけ、天塚汞。
主
(
ヌシ
)
の負けだ。大人しく“
賢者
(
ワイズマン
)
”の遺骸を渡せ」
「ニーナ・アデラート……」
黄金の髑髏を握りしめ、天塚がかすれた声を洩らした。
ニーナは、天塚の胸に視線を落とす。そこに埋め込まれていた黒い宝石に──
「薄々気づいておるだろう?
主
(
ヌシ
)
は“
賢者
(
ワイズマン
)
”が“霊血”の残滓から作り出した
人工生命体
(
ホムンクルス
)
だ。完全な人間に戻りたいという欲望を埋め込まれ、ヤツに利用されているだけだぞ」
「あんたまで……そんなことを言うのか、師匠……」
天塚が殺気立った瞳でニーナを睨む。
しかしニーナは反対に優しく視線を向ける。
「
人間
(
ヒト
)
であるか否かを決めるのは肉体ではない。
魂
(
こころ
)
の在り様だ。
妾
(
ワシ
)
もそこの吸血鬼らも、
人間
(
ヒト
)
としての身体は失ったが、それでも
人間
(
ヒト
)
らしく生きようと足掻いておる。
主
(
ヌシ
)
が“
賢者
(
ワイズマンズ
)
”に従う理由などないのだ」
「理由……僕が……従う理由は……」
脱力した天塚の左手から、黄金の髑髏が離れ落ちた。
鈍い音が甲板に響く。
突如として、カタカタと髑髏が震え出した。
『カ……カカ……カカカカカ……』
黄金の髑髏が振動しながら、笑い声にも似た声を奇怪なな音を放ち始める。
ニーナが不審そうに眉を上げた。
彩斗たちにはなにが起きてるかわからない。しかし髑髏から禍々しい気配を感じるだけだ。
『カカカカカカ……不完全なる
存在
(
モノ
)
たちよ。もう遅い』
それは完全に意思をもって語っている。
「これが“
賢者
(
ワイズマン
)
”なのか?」
「違う……」
ぼそり、とニーナが洩らした呟きに、困惑する。
「違うぞ。あれは“
賢者
(
ワイズマン
)
”ではない! もしあんなものが“
賢者
(
ワイズマン
)
”だと言うなら、“
賢者の霊血
(
ワイズマンズ・ブラッド
)
”はどこにある!?」
「──あ!?」
古城が絶句する。そこに転がっている髑髏が“
賢者
(
ワイズマン
)
”の肉体の一部に過ぎない。
「まさか!」
雪菜が自分の足元へと目を向けた。
「“
賢者
(
ワイズマン
)
”の狙いは、雪菜や夏音ちゃんじゃなくて……!」
「海水か!」
ニーナ驚愕の声を洩らす。
彼女たちの反応に彩斗と古城も少ない知識を思い出す。
海水中には“金”や“ウラン”などの貴金属がわずかに含まれている。
それを“
賢者
(
ワイズマン
)
”の錬金術でかき集めれば──
完全復活の供物として十分だろう。
「させっかよ!」
不安定な状態ではあるが一か八かを賭けて彩斗は右腕を海面に向けて突き出す。
「──降臨しろ、“|
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