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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
34.洋上の慮外
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塚の右腕を弾き飛ばす。
 天塚は慌てて後退する。夏音の前に着地した新たな二つの人影は、天塚を睨んでいた。

「雪菜ちゃん、友妃さん」

「よかった、間に合って」

「危なかった……」

 あのあと友妃は、すぐそこまで来ていた笹崎岬に凪沙を託してすぐに雪菜と合流を果たした。

「よくよく邪魔してくれるな、獅子王機関……まあいいよ、おかげであんたたちを探す手間が省けた」

 天塚が額をかきむしりながら、荒々しく笑った。
 金属製の甲板をグニャリと融かして、無数の影が友妃たちを取り囲むように現れた。
 天塚汞の分身だ。

「その武器とナイフはたしかに少し面倒だけど、ここなら融合の材料がいくらでも手に入る。あんたたちに勝ち目はないよ。逃げ場もね」

 天塚が勝ち誇ったように呟いた。
 たしかに友妃たちに逃げ場はない。
 誰かに助けを求めることもできない。それならここで天塚に唯一対抗できる手段を持つ友妃が倒すしかないのだ。
 たとえ勝機が少なくても諦める訳にはいかないのだ。かつて魔力がほぼなくなった彩斗はそれでも諦めずに、古城の肉体を取り戻すために戦い、優麻の“守護者”が奪われるときも戦ったのだ。
 息を吸い込んで前に出ようとしたそのとき──

「「え!?」」

 窮地の状態だった友妃と雪菜の口から間の抜けた声が洩れた。
 視界の片隅に、信じられないものが映ったのだ。

「なんだ……?」

 驚く友妃たちの視線につられて、天塚が背後を振り返る。
 水蒸気の尾をひきながら、海面スレスレを突き進む灰色の飛行物体。
 それは容赦なくフェリーを貫通する兵器。

「馬鹿な!? 巡航ミサイルだと!?」

 それを認識したときにはもうそいつは目的地まで到達していた。
 だが、予想されていた衝撃は、襲ってこなかった。
 巡航ミサイルが直撃する瞬間、それは銀色の霧へと姿を変えて、フェリーの船体をすり抜けた。

「この霧……!? まさか!?」

 大気に溶けこむ強烈な魔力の波動に、雪菜が叫ぶ。フェリーを包むのは濃霧だけではない。その中に浮かび上がる実体を持たない巨大な甲殻獣。
 第四真祖が従える十二体の眷獣の一体。ありとあらゆる物体を霧へと変える眷獣、“甲殻の銀霧(ナトラ・シネレウス)”が生み出す破壊の濃霧。
 ドン、と耳を劈く轟音とともに、フェリーに新たな人影が現れた。パーカーを羽織った少年と褐色の肌を持つ制服姿の少女。それと、どこか気怠そう顔をした制服姿の少年だ。

「──痛ってェ……ああくそ、着地をちょっとミスった……」

「受け身ぐらいとれよな」

 ゆらりと立ち上がる少年を見て呆れた顔で少年と少女が言う。

「まったく、粗忽な男よな、(ヌシ)らも。|妾《ワシ
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