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東方攻勢録
第四話
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動く事は困難だと判断した男は、にとりの攻撃を受けた後、気絶したふりをして足をつくことができる水底に沈んだのだ。その後にとりが助けようと体を起こした瞬間に床を思いっきり蹴り、そのままにとりの腹部を抉りながら壁にぶつけたというわけだ。
「油断大敵だな……はぁ。あぶないあぶない。もう少しで窒息死するところだったよ」
「ぐっ……くそ!」
 にとりは背負っていた小さなリュックから先端が手になったアームをのばすと、そのまま男を突き飛ばす。その後水中に逃げ込み泳ぎながら、男の動きを観察していた。
「……やられた。衝撃で肋骨折れてるな……これ」
 上半身に大きな釘を打ちつけられるような痛みを感じながらも、にとりは男から距離を取ろうと動き続ける。
 状況は決して良くはない。運よく水中に逃げれたものの、激痛でうまく泳げていない。さらに相手は壁を蹴って行動し始めたので、水中の利点が薄くなってしまった。打開策を見つけなければ、相手がどんどん有利になるだけだ。
「さてどうしようか――」
 そう呟いた瞬間、彼女のすぐ横を何かが猛スピードで通り抜けていった。
「なっ!?」
 水底に視線を向けると、さっき吹き飛ばしたはずの男がこっちを見ながらしゃがみこんでいた。思っていた以上のスピードを出しており、完全に察知することができない。
「あいつ……さっきもろに攻撃をくらってたはずなのに!」
 にとりは五発ほどの弾を作り出すと、周囲に漂わせたまま男に向かって突撃し始める。
 だが、男はこちらを見たままピクリとも動かない。突撃のタイミングの計っているのか、じっとこちらを見つめている。
「動かないなら牽制するのみ!」
 にとりは弾を二発発射させて、男を無理やり動かそうとする。
 だが、それこそが男の狙いだった。
「えっ……?」
 弾が数メートルほど進んだ瞬間、力のない声が漏れ彼女は目を見開く。全身から力が抜けていく感覚が、彼女をおそっていた。
 にとりの目の前には男の姿が現れていたのだ。床を蹴った勢いで、避ける隙すら作らせないほどのスピードをだしている。それに右手はにとりの腹部に向けられており、もはやなすすべがない。
 すべてを悟った彼女は、頭の中が真っ白になっていく。男は徐々に近づいて行く。そして、
「残念だったな」
 彼の口が呟くように動いた瞬間、鉄の塊を猛スピードでぶつけられたような衝撃と痛みが彼女を襲った。
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